早いものでもう4月も終わり。2011年も3分の一が終わったことになる。
今年はいろいろなことで「初めて尽くし」が多い一年となりそうで、 特にこの春から夏にかけては、いろんなイベントのオンパレード(←死語か)。 読書にかまけている時間どころか、書店をじっくり見て回る時間すらないのだが、 それでも惹かれる本にはできるだけ時間を割いていきたいと思う春日和。 <4月の購入本> ・『ジェノサイド』(高野和明) <4月の読了帳> ・『ジェノサイド』(高野和明) 評価:☆☆☆☆☆(飛びぬけ) 父親を不慮の事故で亡くしたばかりの創薬化学を専攻する大学院生・研人は、 死んだ父親からのメールを見て、父親が行っていた研究の痕跡を辿っていく。 一方、イラクで警備要員として働く米国陸軍特殊部隊上がりのイエーガーは、 難病に冒された息子の治療費を稼ぐためにアフリカ・コンゴでの秘密任務に就く。 やがて2人は共通の「もの」のために交わっていく・・・ アマゾンのレビューで全員が5つ星評価であることからもわかるように、 間違いなく2011年のベスト本になりそうなエンターテイメント大傑作。 冒険譚あり、異人種間の交流譚あり、親が子を、子が親を思う親子譚あり、 そして、現生人類の在り方を問うロマンに満ちたSF的進化論の要素もある。 作中に登場する米国大統領と副大統領は、明らかにブッシュとチェイニーを模しており、 彼らの言動や登場人物の彼らに対する態度には作者自身の強い主張が伺え、個人的には共感できる。 特に、イラク戦争の見方(=核兵器の存在ではなく、石油関連の利権のために起こした)については、 日経の終面に掲載中の「私の履歴書」という半生を振り返る自伝がちょうどブッシュの回で、 毎回読むにつけ、「何とまあ薄汚い人間の屑なんだ、こいつは」という読後感に浸っているので、 まさにわが意を得たりという気になった。 それはさておき、人類の歩みにおける人間の位置づけを顧みる意味でもとても有意義なもので、 これはこの10年間に読んだ本のなかでも「至高の一冊だ」と胸を張っておススメできる作品だ。 ・『WHEN THE GAME WAS OURS』(Larry Bird, Earvin Magic Johnson etc) 評価:☆☆☆☆☆ マイケル・ジョーダンが登場する以前の80年代のNBAの旗手として大活躍した、 ボストン・セルティックスのラリー・バードと、ロサンゼルス・レイカーズのマジック・ジョンソンの 2人の大スターの生い立ちと交流を丹念に織った優れたノンフィクション本。 「ライバル」という言葉はまさにこの2人のためだけにあるのだと思わせるような、 学生時代からプロへと続いた苛烈な競争関係は、残念ながら現在のNBAには見当たらない。 ジョーダンにすら「ライバル」といえる対等な選手はいなかったのだが、 この理想とも言える選手同士での敵対的なライバル関係が存在しないことが、 今のリーグの魅力が乏しいことの一因であることは間違いないだろう。 互いを倒すがために互いに身を磨り減らせ、しのぎにしのぎを削った間柄というのは なんと純潔な眩いばかりの輝きを放つものかな、そう思わせる2人の関係が羨ましい。 薬物などの暗いイメージに囚われて暗黒時代といわれた70年代の影を ものの見事に払拭した功労者にして最大のライバル2人の熱く激しい戦いの全記録。 ・『反撃(上・下)』(リー・チャイルド) 評価:☆☆☆☆ ふとしたことで女FBI捜査官とともに誘拐された元米国陸軍の精鋭、ジャック・リーチャーは、 犯人たちの真の目的を探りながら抵抗を続け、やがて、その狙いを知り阻止すべく動く・・・ ストイックなヒーロー・元米国軍人ジャック・リーチャーが主人公のサスペンスアクション第2弾。 この女性に優しいハードボイルドなタフガイぶりは世界中の男の格好の見本といえるし、 いかなるときも決して失うことのない冷静沈着さと慎重さも男として学びたいところ。 アンソニー賞受賞の翻訳第一弾「キリング・フロア」、 英国バリー賞最優秀長編賞とネロ・ウルフ賞を受賞した翻訳第四弾「前夜」と同様に、 安定した筆致と水準以上の文章の上手さは、今回も決して期待を裏切らない。 次は翻訳第三弾「警鐘」を読もう。 ・『猟犬』(深見真) 評価:☆☆☆☆ ぶっきらぼうで愛嬌はないが、タフで折れない心をもった女性刑事のハードボイルド連作中篇集。 警視庁捜査一課特殊犯捜査、通称SITの第四係に所属するレズビアンの女性刑事・呉内冴絵は、 風俗嬢連続殺人事件と2件の立てこもり事件の関連性に気付き、背後に見え隠れする陰謀に迫って・・・。 過去に事件の被害者となって指を失ったタフでクールな女性刑事などの登場人物の造詣はもちろん、 捜査に当たる事件の設定や背景、からくりが見事で、銃撃戦の描写もリアルそのもので、 ときにマインドゲームで犯人に迫る様子も臨場感があっていい。 次はより難解で凶悪な事件に対処する長編ものにどっぷりと漬かりたい。 <ただいま読書中> ・『ロスト・シティZ 探検史上、最大の謎を追え』(デイヴィッド・グラン)
by Worthy42
| 2011-05-02 22:55
| 一冊入魂(読書記録)
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