『にがい米』で田植えに精を出すシルヴァーナ・マンガーノが、
ふと手をやすめて額の汗をぬぐう。髪は壮麗なまでに乱れほつれ、
はちきれそうな肉体には本物の汗がしたたっている。
差しあげた太い腕の下から湿った腋毛がのぞき、
みぞおちでゆるく結んだシャツが風に吹かれてはだけると、
重く揺れる乳房のみずみずしい谷間がむき出しになる。
乳首は汗で貼りついたシャツ地を破らんばかりに突きだしている。
スクリーンをつかのま通りすぎた蜃気楼にすぎないが、
悩殺されたぼくの目には、まぎれもない本物の女がそこに息づいていた。
彼女の肉体からは、ほとんど実際に感じられるほど大地の匂い、
禁じられた女の体臭が立ちのぼっていた。
『フリッカー、あるいは映画の魔』より