悠久の亀裂の断片


ふたりは、最初に出会ったころ、 いつもいっしょに映画を見に行っていた。それはある意味で、 二人がともに楽しめるひとつの文化的な催し物だったのだ。それがいまは、彼らがただひたすら過ぎていってほしいと願う長い時間を埋めるためのものになっていた。

それまでの数年間のうちに、 ふたりの間にはある距離ができていた。 彼らは互いに、徐々に、 しかし容赦なく心が離れていったのだ。 トラウマを感じさせるようなことはなかった。大声の喧嘩も、皿が飛ぶことも。ただ、以前燃えていたところに冷ややかさが、ことばが溢れていたところに沈黙があるだけだった。彼らは互いにまだ愛を交わしてはいたが、それも以前よりまれな、何か冷たい、ばらばらの情、欲望というよりは必要に迫られた情に駆られての行為だった。

『夜が終わる場所』より
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by Worthy42 | 2007-05-12 14:09 | 美句妙文礼賛(魅惑の文言集)
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