NHK「トップランナー」の可能性


私はNHK-BSで不定期に放映される『アクターズスタジオ』というインタビュー番組の大ファンで、よく熱心に見入ってしまう。ジェームズ・リプトンという思慮深くユーモラスな教授然とした司会者(学長らしい)と俳優・映画監督との公開対面インタビュー(トークショーの趣きもある)の掛け合いも見事ながら、このショーを何より盛り上げているのは、観客がニューヨークの演劇学校『ニューヨーク・ジ・アクターズスタジオ』の俳優・脚本家志望の学生達(といっても年齢層はさまざま)であるということ。学校の授業の一環ゆえ、観客はゲストの一挙手一投足をつぶさに観察し、質問コーナーに至っては、質問は技術論から精神論まで及ぶほど専門的で、画面を通して見ているこっちまで学生達の情熱が伝わってくるほど熱を帯びている。

イベントをやっていた頃からずっとこんな真剣なトークショーを作ってみたいと思っていて、今でもその可能性をちびちび探ってなくはないのだが、今もっとも近いのがNHKの『トップランナー』。最近、注目している脚本家・作家の本谷有希子が出演するとあって注目して見ていたのだが、雰囲気はわりとアクターズスタジオに似ているなと思った。

今話題の人物の素顔が垣間見えて興味深いし、驚くほどオープンなハリウッドの芸能人とは違って、公衆の面前に姿を出す(大衆と触れ合う)ことに二の足を踏む有名人(特に俳優・女優の類)が多い日本で、この手の「ノンフィクション・ショー」は貴重だ。

司会者(山本太郎と本上まなみ)が二人とも若いせいか、遠慮がちな割には浮かれてゲストより前面に出ようとしたり、必要以上に媚びたりするのは気がかりだけど、それでも構成にはしっかりとゲストに迫ろうとする心意気が見て取れて気持ちがいい。

惜しむらくはゲスト本位過ぎるため余裕がないせいか、観客の表情を捉えるカットが少なく、質問コーナーの時間も(オンエア上は)短かったことか。

観客が全員俳優・脚本家志望の学生というわけにはいかないので、アクターズスタジオのように専門的な鋭い質問はなかなか出ないが、この日は脚本家志望のような女性もいたようで、質問もなかなか的を得ていた(全編を通してミーハー的な盛り上がりに欠けた気がしたのは、そんな”野心”を持った観客が多く、勉強の心構えに来ていたせいではなかったのかと勝手に思っているのだが)ので、そのほかの質問についてももっと聴いてみたかった。

どうせ公開インタビューをするなら、目をキラキラさせて羨望の眼差しを送るだけのファンの観客より、何かを学ぼうと話に聞き入り、鋭い質問を浴びせる観客の方が緊張感も出て、傍目で見ていても楽しい。「夢見る素人」と「玄人」の掛け合いほど熱を浴びる瞬間はないだろうし、それが将来の”トップランナー”を生むのだとすれば、これほど見応えのある”観客参加型ショー”はないだろう。

まだまだ『情熱大陸』ほどゲストには迫れていない(あのナレーションの声のせいもある、笑)けれど、なかなか日本ではお目にかかれないタイプの番組なので長続きしてほしいなと思う。
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by Worthy42 | 2007-05-13 01:37 | 情熱と怠惰の断片(日記的)
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