中田英寿 誇り

中田英寿と(専属マネージメント会社ともだが)最も懇意とされるライターのノンフィクション。

この本に語られた内容で最大の驚きは、中田の鉄のように強靭な意志やサッカーにかける真摯な情熱でもなく、囁かれているようなW杯で敗退の一因ともなった一部代表選手との不仲ではない。それは、「昨日のゲームはサッカーを語るレベルにはない。まず走らなければサッカーにならないんだから」などといった中田の発言から窺える、「走るサッカー」を提唱する白髪鬼との相似性だ。

中欧の老獪な知将が最も基本としていることを
中田も口を酸っぱくしてチームメイトに説いていたという事実。

そして、同じ基本的な哲学を掲げたストイックな二人が邂逅することがないという事実。

知らない方がよかったのかもしれないという気になってしまうのは、
「リーダーシップ」「ハードワーク」「得点力」「メンタルタフネス」といった
今の日本代表に欠けている部分を補う能力すべてを
この男が備えているからという、あながち的外れでもない思いにとらわれているからか。

日本を代表するサッカー選手の人間像が、それに掛ける実直な想いが、
そして現実以上の期待を抱かせる彼のスペシャルな何かが、伝わってくる良著。

ただし、著者は「サッカー」ではなく、「中田だけ」を追いかけていただけあって、
(長年取材しているのに!)サッカーに関しては全くのトーシロもいいところ。

フォーメーションを「4-5-2」だとか書いていたり、
過去の試合の記述が明らかに間違っていたりと
(あまりに多かったので印をつけるのをやめたほど)誤記のオンパレードで、
サッカーライターというより一人の書き手として大きなマイナス。

中田を追いかけていてサッカーそのものに惹かれないのかな、
だから勉強しなかったのかな、と思わずにいられなかった
(案外、そのことが一番の驚きだったりする)。

中田英寿誇り
小松 成美 / / 幻冬舎
ISBN : 4344013395

評価:A-
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by Worthy42 | 2007-09-11 23:01 | 一冊入魂(読書記録)
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