実況の醍醐味

実況の醍醐味というのは喋り手の巧さに尽きると思う。

以前、ラジオニュースの原稿を作っていたころ、
オリンピックの体操の鉄棒の競技だったろうか、
金メダル獲得と相まって「・・・・は栄光への架け橋だ」という実況が
賞賛されていたなか、私の周囲の”言葉の専門家たち”は
件の実況を「陳腐すぎる」とケチョンケチョンに批判していた。

私自身は、批判するほどのことではなかったけれども、
言葉を飾っただけで取り立てて面白くはなかったなとは思う。

今まで聞いた実況の中でもっとも心躍らされたのは
バスケットでボールを足の前後に通し交差させる
”クロスオーバー”というテクニックで選手が相手を
一瞬のうちに抜き去るシーンの実況。

"This way, that way, anyway, Hardaway....
Oh, killer cross over by Tim Hardaway!"

実況がまず韻(way=方向、Hardaway=当該選手の名前)を
踏んでいることがなによりもまず素敵だった。
彼のクロスオーバーは早過ぎて、文字通り、
どちらの方向にドリブルで抜き去るのかわからないため
(「こっち」か、それとも「あっちか」)、余計にその韻と文章の巧さが際立つ。

読むテンポもドリブルのリズムと一体となっていて出色の出来。
ラップを奏でているようでこちらまで踊りたくなる。

マイケル・ジョーダンの驚異的なジャンプ力を生かしたプレイの実況では、

"I saw a man fly"
"I do not believe what I saw"

とかがシンプルで好きだった。

こういった単純だけれど心に残る豊穣な言葉が
瞬時のうちに紡がれるのは
「沈黙は銀」とするお国柄なのかな。

世界的にメジャーな大会の総合司会(実質は応援団だけど)を
博識も経験もないタレントに頼っている国では生まれることはないだろうな。
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by Worthy42 | 2007-09-17 20:54 | 情熱と怠惰の断片(日記的)
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