今週の読了帳(03・31~04・06)

・『バルタザールの遍歴』(佐藤亜紀)
評価:AA+

偉大な傑作。

これを日本人の作家が、
齢29にしてデビュー作として書いたという事実の前に、
「驚愕」以外の感想を持ち得ない。

ナチス台頭期のウィーンに暮らす、
一つの体に二つの精神(人格)を持つ没落貴族、メルヒオールとバルタザール。

酒に溺れ、女に溺れ、財を使い果たし、
望みとおりに無抵抗なまま浮浪者同然にまで身を窶していく、
その頽廃化の過程がメルヒオールの手記の形で淡々と突き放すように描かれている。

西洋美術史で修士課程にまで進んでいるだけに
日本人には馴染みの薄いヨーロッパ貴族の生活描写が白眉の出来で、
ミステリやエンタメのように特に劇的な何かが起こるわけではないのだが、
SF要素も満ちたその圧倒的な引力の前に、
抗うこともできずただただ引き込まれてしまった。

この作家に出会えたことを心から幸せだし、
今後、全ての作品に目を通していくし、
死ぬ前にはその傍らにこの本を置いておきたいと思った。


・『四季 冬』(森博嗣)
評価:A+

「四季シリーズ」の最終巻。
偶然にも『バルタザールの遍歴」と同じように
二つの精神を有する犯罪者にして天才科学者の
生い立ちからある意味での終わりまでを収めている。

ところどころストーリが急に飛躍しているため、
理解が不十分なんじゃないかと自問自答をする箇所があるが、
それも含めてこのシリーズの魅力的なところかと。

『四季 秋』での前の2つのシリーズとの相関性が明らかになって
その壮大な構想に度肝を抜かれて興奮していたせいか考えられずにいたけど、
人類史上稀に見る天才の「行く末」は確かにこの方向しかないのかなと
鋭敏な読者なら辿り着くかもしれない展開だった(私は違うけれど)。

いずれにせよ、
このシリーズが終わってしまってちょっと残念かな。


・『Φは壊れたね』(森博嗣)
評価:A

上記の「四季シリーズ」後の新シリーズの第一巻。
ま、始めはこんなものかと思うけど、
新たな登場人物もなかなか興味深い。

この人の天賦の才は
遠い視点から全体を俯瞰し構造の構築へと繋げるするその空前絶後な想像力。
今はまだその助走というか、慣らし運転というところか。

むしろ、今後どのように展開されるのか、期待はますます高まるばかり。

<Now on Reading>
・『シンプル・プラン』(スコット・スミス)
・『ヴェネツィアの宿』(須賀敦子)
・『天使』(佐藤亜紀)
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by Worthy42 | 2008-04-06 11:56 | 一冊入魂(読書記録)
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