①『百年の孤独』(ガブリエル・ガルシア=マルケス)
②『深海のYrr(上・中・下)』(フランク・シェッツィング) ③『チャイルド44(上・下)』(トム・ロブ=スミス) ④『荒ぶる血』(ジェイムズ・カルロス=ブレイク) ⑤『黄色い雨』(フリオ・リャマサーレス) ⑥『20世紀の幽霊たち』(ジョー・ヒル) ⑦『ラジオ・キラー』(セバスチャン・フィツェック) ⑧『千年の祈り』(イーユン・リー) ⑨『北東の大地 逃亡の西』(スコット・ウォルヴン) ⑩『私を離さないで』(カズオ・イシグロ) 1~3位の作品は今年読んだ80冊の中でも間違いなくベスト5に入れたくなる傑作で、 ①は生涯でもベスト3に入る、今さら説明不要の大作で今年のNo.1。 ③は「このミス2008」では海外部門1位だったが、 地球規模の壮大なスケールに度肝を抜かれたSF大作の②を優先した。 いずれにせよ、両作品とも傑作であることには違いない。 5位までは悩むことなく決めることができたが、6位以降は悩んだ。 帯の惹句で衝動買いをした作品はどうしても過大な期待を寄せがちで、 その期待値を超えないと良作であっても多少の不満を抱いてしまう。 ちなみに9位は今年最初の一冊。我ながらよほど印象深かったと見える。 ①はあらすじ紹介者泣かせの込み入った芳醇なストーリーが特色の至高の一冊。 端的にいえば、架空の村コマンドを開拓したブエンディア一族の創世から衰退までを 独特の文体で訥々と書き連ねた壮大な年代記という趣。 個人的には、作者のガルシア=マルケスが元ジャーナリストだというのが信じられない。 徹底的に事実と照合して記事を書き上げるという仕事に従事していた人間が、 いったいぜんたい、どうしてこんな奇想天外かつ幻想的なストーリーを紡げるのだろう。 ②はドイツ発の海洋SFミステリ。専門的かつ説明的な生物学的な話がありつつも、 夢中になって上中下巻をあっという間に読み終えた。 地球にとって人間とはどれほど卑劣で矮小な存在であるのかを考えさせられるとともに、 逆説的に、日々の生活をもっと実りのある大切なものにしようと思い至った。 ③は旧ソ連、スターリン政権下に暗躍した児童連続殺人鬼を追う 元エリート捜査官の活躍を描いたものだが、何より圧倒的な迫力を醸し出すのは、 独裁恐怖政治のもたらす不条理かつ残忍な社会システムの冷酷さ。 ナチスがユダヤ人を虐殺したのとは違い、同胞が同胞をちょっとした出来事で処刑する。 巨大な恐怖(権力)の前には殺人者の恐怖など二の次、そんな時代背景が恐ろしい。 ④はメキシコ革命時代の冷酷な闘士の血を受け継ぐ殺し屋が主役の冒険活劇。 暗黒街に生きる男たちの過酷ながら快活とした生き様が生き生きと描かれていて タイトルどおり、読者の血も荒ぶり、滾らせてくれること請け合いの一冊。 かなり前に読んだ⑤の余韻がいまだ冷めず5位にランクイン。 しとしとと静謐に紡がれたストーリーを浴槽の中でキャンドルを灯しながら読んだせいか、 今でも描かれた情景が皮膚を通って心にじっとりと染み入るかのように感じる。 期待の大きかった⑥はこの順位。期待値が大きくてハードルが高すぎた。 決して評価が低いわけではないが、短編集だけに私には合わない作品が幾つかあった。 もちろん、良作やギョッと思わせる快作もあり、形容しがたい異様な思いに囚われた。 ⑦は初めて読んだドイツ人作家の作品。 怒涛のように目まぐるしく変化する展開はエンタメとしては十分に面白い。 どんでん返しもあって、練りに練られたストーリーには食傷気味も感心した。 ⑧は初めて読んだ中国人作家の作品。 中国社会に土着した作品で、朴訥とした淡い描写がとても印象的。 こういう話が生まれる中国の土壌に、やはり近くて遠い国だなという思いを一層強くした。 ⑨は1年ほど前に読んだ、広大なアメリカの片隅で負け犬然として暮らす男たちの話。 不快というか、哀れというか、悲惨なというか、共感できる要素はひとつもないのに、 なぜか燻ぶり続ける熾火のように心の隅のほうに残っている。 ⑩は去年(だっけ?)、流行作家の仲間入りを果たした日系人作家の出世作。 途中からある程度のあらすじが読めるため、こんな未来にだけはなってほしくはない、 そんなことをずっと願いながら読み進めたことを覚えている。 人間はなんと残酷なことを思いつくのだろう、とも。
by Worthy42
| 2008-12-29 23:52
| 一冊入魂(読書記録)
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