通行人が奇異の目を私たちに向けてきた。好きなだけ見るがいい。お前たちに、
これだけ深い感情の交流が持てるか。極限状況の中で互いに信じ合える相手がいるか。
人目をはばかることなくお互いを労りあえる相手がいるか。いはしまい。いるはずがない。
だからこそ、親が子を殺し、子が親を殺す世界が出現したのだ。自分は無関係だと高を括り、
そのくせ、自分のことしか考えたことのないおまえたちがこの世界を作り上げたのだ。
―『9.11倶楽部』(馳星周)より
(「我が子を喰らうサトゥルヌス」、ピーテル・パウル・ルーベンス)