今週の読了帳(03・16~03・22)

もうすっかり春。

「秋の夜長にミステリ」とは言うが、
春のポカポカ陽気には、さてどんな本がいいのだろう。

多和田葉子や堀江敏幸のような作家に手を出したくなるが、
実際に読んでいるのはおどろおどろしいミステリばかり。
読書に季節感がなくてもいいじゃないか、とは思うのだが。

<今週の購入本>
・『プロ野球スカウティングレポート』(小関順二)


<今週の読了帳>
・『反貧困』(湯浅誠)
評価:☆☆☆☆

「臭いものに蓋」で明るみにされない日本の貧困の実態が明らかにされている。
「アメリカ化」社会の成りの果ては『ルポ 貧困大国アメリカ』で紹介されているが、
日本も遅かれ早かれ同じ道を辿るのではとの懸念は強まるばかり。

大の虫を生かすために小の虫を殺す、そんな政治家が多すぎる。

貧困は犯罪の温床。夜道を一人で歩けない、自衛武装しないと歩けない―――。
私の子供や孫が生きる時代をそんな社会にしたくはない。

・『プロ野球スカウティングレポート』
評価:☆☆☆☆

もっぱら野球を観戦(テレビ)する機会が減っているのに、この一冊だけは欠かさず読んでいる。
読み物としても十分耐えうる面白さ+マニアックさ。

著者は年間百数試合、ストップウォッチを片手に日本全国を野球観戦するスポーツライター。
57歳にもかかわらず、野球に賭けるこの情熱。
この本を読む度に、年を取っても衰えぬ情熱にただただ感心するばかり。


・『東京異聞』(小野不由美)
評価:☆☆☆

人魂売り、首遣い、辻斬りの闇御前、火炎魔人―――。
魑魅魍魎が跋扈する戦後間もない帝都、東京。
それらははたして闇を支配する異形の者の仕業なのか。

人はなぜ日中に活動し、夜に睡眠を取るのか、
人間の行動原理は人類が誕生して以来、いつの頃から定まったのか、
それは人間がまだ被食者だった当時の影響を受けているのか、
そんなふうに、人類史における「夜」の、「闇」の意味を考えさせられる怪奇ミステリ。


・『十角館の殺人』(綾辻行人)
評価:☆☆☆

20年以上前に出版された、そのトリックゆえに日本ミステリ界に大きな影響を与えたとされ、
私はとんと詳しくないが、どうやら「新本格ミステリ」の始祖ともいうべき一冊らしい。
アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を本歌取りしたような孤島での連続殺人モノ。

多分、10代や学生の頃のような若かりしときに出会っていたら衝撃を受けていただろうけれど、
それなりの読書量を経て30歳を超えて読んだ衝撃は、さほどでもなかった。
トリックには唸らされたけれど、むしろ、この作品の原案を大学生のころに考え付いた、という
著者の早熟な天才ぶりには驚かされた。

壮大なトリックにキャラの生えた探偵役を土台とする新本格ミステリは嫌いではないし、
森博嗣や歌野晶午、貫井徳郎といった作家は好きなのだが、
トリックやキャラに特色があればあるほど、陳腐な動機との「落差」が気になる。

人を殺めるにはそれ相応の理由がほしい。
大がかりなトリックを仕掛けるのなら尚更で、その点がこの作品でも拭いきれない。
もっとも、人を殺める理由なんて、現実にはそうない(金か、痴情の縺れか、怨恨)。
(だから、殺人事件のほとんどは、ニュースとしての社会的価値が低い)。
そのへんが新本格ミステリの弱点だったりするのかな、なんて一人妄想に耽る。


<ただいま読書中>
・『ポスト戦後社会―シリーズ日本近現代史〈9〉』(吉見俊哉)
・『殺戮に至る病』(安孫子武丸)
・『嗤う伊右門』(京極夏彦)
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by worthy42 | 2009-03-22 22:12 | 一冊入魂(読書記録)
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