Book of the Year 2009 ノンフィクション

なんて仰々しく紹介するほど読んではいないので、正直どうかと思うが、
それでもフィクションと一緒くたに順位付けするのはさすがに忍びない。

というわけで、一年間に読了したわずか12冊(去年のほぼ半分!)のうち、ベスト5だけご紹介。

①『戦場の掟』(スティーヴ・ファイナル)
②『旅する力』(沢木耕太郎)
③『貧困大国アメリカ』(堤未果)
④上杉隆(『官邸崩壊』、『ジャーナリズム崩壊』)
⑤『ウォールストリートジャーナル―世界をめざした非凡と異端の男たち』(エドワード・E. シャーフ)

①はイラク戦争後、高額な給料と引換えにイラクで働くことを選んだ「傭兵」たちの実態を暴いた一冊。
軍人としてイラク戦争に従事し、生き永らえて母国で全うな生活を歩もうとしたにもかかわらず、
今度は「私兵」として再度イラクに赴くことを決意した男たちの壮絶な生き様には心打たれるが、
末期癌の父親、裁判に巻き込まれた弟を抱えながらもイラクに戻って取材を続けた作者の姿にこそ、
果てない狂気を感じてしまった。
人を殺すということ、人の死を目撃するということ、死の危険に常に晒されるということ、
人非人でない限り、人は「死」の重みに次第に耐えられなくなるようにできている。
だとすれば、人がこうも「死」に魅了されるのは、「死」に自ら近付こうとするのはなぜだろう。
そんなことに無限回廊の如く思いを巡らせた傑作。


②は若者の旅のバイブル『深夜特急』の作者が、
当時、そしてその後の旅を振り返って書き記したエッセイ。
講演会に駆けつけるほどのファンである私にとっては、垂涎の一冊。
旅が歳を経るとともにその有様を変容させていくのを身をもって体験しているので、
いろいろな意味で考えさせられた。
ちなみに私は旅(の類)の目的地に入ると、必ず書店と酒場を訪れるようにしているが、
それ以外の行動に関しては、20代初頭と比べれば、大分変わっているような気がする。
それが幸せなことかどうかは、未だ判別できないのだが。


アメリカの想像を絶する貧困の実態をレポートしたのが③。
アメリカン・ドリームは確かに存在するのだろうが、
彼の国で暮らすことはイカサマがまかり通るギャンブルに全財産を賭けるようなもので、
とてもじゃないが住んでみようとは思わない、そんな気にさせる現状が余すところなく記されている。
1年間の滞在経験だけでは知りえなかった実情を知るにつけ、
田舎で無邪気に暮らしていたあの頃の自分が幸せだったのかどうか、複雑な気持ちになったのだが、
わが国もこの国と同じ行く末を辿ってしまう可能性を考えると、暗澹たる思いに囚われるのだった。


安部政権下の閣僚たちの無能さと、日本のメディアジャーナリズムに蔓延る権威主義を暴露した
上記2冊は甲乙つけ難い良作だったので、4位は作者名で選んだ。
お粗末極まりない愚かな政治家と、権力臭を漂わせる唾棄すべきメディア。
今の日本を牛耳っているといっても過言ではない両者の実態はこの程度なのだと知らしめてくれる。
政権は民主党に移ったが改善の兆しはわずかで、記者クラブは撤廃どころか改善も捗捗しくない。
要は、権力に魅せられた男たちの既得権益の確保と優越意識(すなわち、嫉妬)に帰結するのだが、
その単純さゆえに非常にタチが悪い。たかだが政治家、たかだかメディア、に過ぎないのに。


アメリカの経済新聞、ウォールストリートジャーナルが産声を上げた日から
軌道に乗り出した80年代くらいまでを克明に描いたのが⑤だ。
一弱小業界紙から有力新聞紙にまで上り詰める過程で大きな貢献を果たしたブンヤ達が
意気揚々と描かれていてとても清清しい。
昔気質のこんな新聞屋たちが屋台骨となったのだなと感心させられる一方で、
新聞社に勤務していたので、やはりというか、記者たちの変人振りには親近感を覚える。
酔っ払って毎日昼ごろ出社する先輩や、エレベータ前で殴り合いをする先輩たち、
毎晩のようにスナックに足繁く通って愛人の世話をする上司たち。懐かしさもひとしおの一冊。
[PR]
by Worthy42 | 2009-12-29 23:43 | 一冊入魂(読書記録)
<< Book of the Yea... 今週の読了帳(12・21~12... >>