久方ぶりの読了帳(01・18~02・11)

およそ3週間ぶりの読了帳。

新年から怒涛の忙しさで、あまり読書に時間を割けていないのだが、
移動の時間を中心にページを重ねている次第。

新書や政治・社会関係のノンフィクションに幾つか気になる作品があるほか、
コーマック・マッカーシーの『ブラッド・メリディアン』が傑作との誉れ高いと聞き、
ニューヨークタイムズ紙で作家の投票によりベスト・アメリカン・ノヴェルズ(2006-1981)に選出されたとあって、
とても気になっているところ。まずは、同作家の前作原書『ROAD』を読み終えなければ。
が、現在、『Top of The World』を読み進めているので、ずいぶんと先の話になりそう。

<久方ぶりの読了帳>
・『ハーモニー』(伊藤計劃)
評価:☆☆☆☆

「核」による世界的な大災禍を経て、医療経済で復興・発展した福祉厚生社会に暮らす人類。
互いが互いを思いやって気遣う穏健な現代では、科学技術の発展により病気はほぼ消滅していた。
そんな「強制的な」優しさと「狂信的な」健康第一主義を根幹にした人類社会に未曽有の危機が襲いかかる。
立ち向かうのは、10年以上前に友人とともに自殺を図るも生き残った女性。
調査を進めるうちに、危機を操る背後には、その時に死んだはずの友人の影が・・・。


ちょうど1年ほど前に急逝した若手SF作家の遺作。
作家デビュー作の『虐殺器官』に負けないほどの奥深い面白さ。

何よりもまず、設定の発想がユニーク。
世界中に流出した核兵器があちこちで使用された後に、荒廃した人類がたどり着いたのが、
病気を消滅させ、健康体でいることを強制する医療体制が敷かれた社会であるというのは面白い。

つくづく、この新進気鋭の作家の死が悼まれる。


・『月野さんのギター』(寒竹泉美)
評価:☆☆☆☆

日頃は本だけでなく映画でも自分からは全く触手が伸びない分野の本なのだが、
マイミクさんのデビュー作にして「第7回「講談社Birth」小説部門受賞作とのことで即買い。

遠距離恋愛中の恋人が親友と浮気をしていることをしった主人公。
だが、自分にも気になる女性がいて心底起る気になれない。
だが、その女性には彼氏がいることが分かる。
一度に2人を好きになることはできるのか、という疑問を胸に秘めた主人公は・・・。


京都を舞台にしている本で、京都への移動中に大部分を読んだせいもあるのか、
学生時代や20代中盤の自分を思い出して、自らの未熟さや気まずい過去を思い出して、
あの頃のことを誰かに告白したい、誰かと共有したい、海に向かって叫びたい、
そんな悶々とした想いに囚われ、深い感慨に耽る羽目になった。

特筆すべきは、男性の主人公の感情の機微を非常に正確に捉えていること。
恋人の浮気現場を目撃したら、多分、熟慮の末、同じ行動を取ると思うし、
自分の存在を名乗りたい場面では気後れして名乗れず、
その一方で、とある状況下で強引に意中の女性を口説き落とすという、
この主人公の豪快さや傲慢さと、繊細さや気弱さが混在する性格は、「男」ならではという気がするのだが、
女性からすれば限りなく面倒くさいであろう男のそんな一面をよくぞ理解してくれたものだ、と
世の男を代表して拍手喝采したい心境になった。


・『「噂の真相」 トップ屋稼業 -スキャンダルを追え!-』(西岡研介)
評価:☆☆☆☆☆

神戸新聞社を経て、悪名高い、アノ、「噂の真相」で成らした記者の仕事に纏わる諸事をまとめた一冊。
阪神大震災直後、瓦礫の下に埋もれた人々と職業的矜持の間で絶望的なほど煩悶したエピソードから、
神戸市の件の「少年A」事件、東京高検検事長の愛人スキャンダル、
TBS社員とアイドル達による乱交スキャンダル、森喜朗元首相の買春の事実など、
織り込まれた事件・事故に関する詳細な事実や何者をも恐れない忌憚のない意見は、
若手有数のトップ屋(=週刊誌の巻頭記事を飾るスクープ記事を売り込む記者)らしくとても面白い。

やんちゃで毒の強そうな関西人らしい豪放磊落なキャラクターの割には意外に謙虚だが、
「エライ人にはおもねらず、ワルイ奴は眠らせない--というジャーナリストとしての最低限の矜持をもって」
というシンプルな主義主張、これからもそれを貫いて頑張ってや、と応援したくなる。

私も基本的には所謂権力者やその取り巻きには鼻から疑ってかかるし、
権力者に積極的に阿る人々には距離を置きたいタイプだが、
そうかといって、この本に書かれていることを100%鵜呑みにするわけにはいかない。
それでも、「噂の真相(及び、かの有名な岡留安則編集長」はもちろん(残念ながら既に廃刊)、
他の週刊誌の見方を変えてくれた、マスコミに興味のある人には必読の一冊。


・『増大派に告ぐ』(小田雅久仁)
評価:☆☆☆

「第21回日本ファンタジーノベル大賞受賞作」ということで期待したのだが、私にはあまり肌が合わず。
文章はそつがなくて巧いな、読ませるな、と思ったのだが、「ファンタジー」の要素が・・・。

同じファンタジーノベル大賞受賞作ということであれば、
私なら第3回の受賞作品『バルタザールの遍歴』をおススメする。


<只今読書中>
・『Top of The World』
・『永遠の0』(百田尚樹)
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by worthy42 | 2010-02-11 18:35 | 一冊入魂(読書記録)
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