カテゴリ:美句妙文礼賛(魅惑の文言集)( 58 )

It's all about Motivation

「勝てないと思ったら、練習なんてできないだろう。ここは五輪だ。
 どんなことでも起こせると思っていたさ」

―――バンクーバー五輪男子1500mで金メダルに輝いたタイテルト(オランダ)

2種目制覇を狙ったあのシャニー・デービス(米)を脱帽させた30歳は、
2006年以降、W杯未勝利、全くの無印だった。

「起こる」ではなくて、「起こせる」ってところに、意志の強さを感じる。
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by worthy42 | 2010-02-23 22:46 | 美句妙文礼賛(魅惑の文言集)

最期の星

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開いたドアからなだれ込んできた星が、驚いたような表情を浮かべて死んでいった男の
凍りついた目のところでいったん止まり、そのあと目の中に吸い込まれてゆく。

―『狼たちの月』より
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by worthy42 | 2010-02-20 23:10 | 美句妙文礼賛(魅惑の文言集)

十死零生

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しかし、死を覚悟して出撃することと、死ぬと定めて出撃することは全く別ものだった。
これまでは、たとえ可能性は少なくとも、一縷の望みをかけて闘ってきたのだ。
だが特攻はもう運もなにもない。生き残る努力もすべて無駄なのだ。出撃すれば必ず死ぬ。



『永遠の0』(百田尚樹)
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by worthy42 | 2010-02-13 23:05 | 美句妙文礼賛(魅惑の文言集)

美学

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「死守せよ。そして軽やかに捨てよ」(深作欣二)
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by worthy42 | 2010-02-12 00:35 | 美句妙文礼賛(魅惑の文言集)

Lost

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兄が肋が浮いて見えるようになるまで女を漁ってやり続けるのは、別に女が好きなだからでも、
やるのが好きだからでもない。ただ、蚤から人間に至るありとあらゆる雄から、鰭も尾羽も囀りも、
艶やかな毛皮も、力も名誉も財産も、愛したり憎んだりする人格さえ、全て剥ぎ取って残る何かに
突き動かされていたのだ。人間を人間に見せる顔が削ぎ取られた今や、
兄は剥き出しになった雄の本質であり、純化された本質を神性と呼ぶとしたら、
雄の神性の具現だった。と言うより、兄にはもうそれしか残っていなかった。


ぼくは美しいものを目にしていたのだ―――人間と人間がお互いを獣のように追い回し、
躊躇いもなく撃ち殺し、蹴り付けても動かない死体に変えるのは、川から霧が漂い上がる
キエフの夕暮れと同じくらい、日が昇っても虫の声が聞こえるだけですべてに死に絶えたように静かな
ミハイロフカの夜明けと同じくらい美しい。半狂乱の男たちが半狂乱の男たちに襲い掛かり、
馬の蹄に掛け、弾が尽きると段平を振り回し、勝ち誇って負傷者の頭をぶち抜きながら
略奪に興じるのは狼の群れが鹿を襲って食い殺すのを同じくらい美しい。殺戮が?それも少しはある。
それ以上に美しいのは、単純な力が単純に行使されることであり、
それが何の制約もなしに行われることだ。


・・・ぼくを全面的な溶解から救っていたのだ。ぼくはまだ人間であるかのように扱われ、
だから人間であるかのように振舞った。それをひとつずつ剥ぎ取られ、最後のひとつを
自分で引き剥がした後も、ぼくは人間のふりをして立っていた。数え切れないくらいの略奪と
数を数えることさえしなくなった人殺しの後も、人を殺して身ぐるみを剥ぎ、
機銃と手榴弾で襲って報酬を得ることを覚えても、ぼくはまだ人間のような顔をしていることができた。

(以上、『ミノタウロス』より)
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by worthy42 | 2009-12-03 11:18 | 美句妙文礼賛(魅惑の文言集)

The Choice

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「愛のない結婚もあれば結婚のない愛もある」
―――『男たちの伝説』(落合信彦)
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by worthy42 | 2009-10-04 19:21 | 美句妙文礼賛(魅惑の文言集)

激情

通行人が奇異の目を私たちに向けてきた。好きなだけ見るがいい。お前たちに、
これだけ深い感情の交流が持てるか。極限状況の中で互いに信じ合える相手がいるか。
人目をはばかることなくお互いを労りあえる相手がいるか。いはしまい。いるはずがない。
だからこそ、親が子を殺し、子が親を殺す世界が出現したのだ。自分は無関係だと高を括り、
そのくせ、自分のことしか考えたことのないおまえたちがこの世界を作り上げたのだ。

―『9.11倶楽部』(馳星周)より
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(「我が子を喰らうサトゥルヌス」、ピーテル・パウル・ルーベンス)
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by worthy42 | 2009-02-28 23:17 | 美句妙文礼賛(魅惑の文言集)

死者は誰も赦さない

罪悪感の対象が死んでしまうということは、
いつか償うことができる、という希望を剥奪されることだ。
殺人が最も忌まわしい罪であるのは、償うことができないからだ。(『虐殺器官』より)
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Franz von Stuck 、Die Sünde(罪)
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by worthy42 | 2009-01-18 00:36 | 美句妙文礼賛(魅惑の文言集)

スイッチ・オン

「毎日書くのだ。(中略)書けるときに書き、書けないときに休むというのではない。
書けない、と思うときにも、机の前に座るのだ。すると、ついさっきまで、
今日は一字も書けない、と思った筈なのに、ほんの少し、
行く手が見えるような気がするから不思議である。
書くことが大切なのではない。机の前に座ることが大切なのである。
机の前に座って、ペンを握り、さア書く、と言う姿勢をとることが大切なのである。
自分をだますことだ。自分は書ける、と思うことだ」


―宇野千代

「書く」を「読む」に、そして、もちろん、「訳す」にして
自らを戒める。
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by Worthy42 | 2008-06-21 10:04 | 美句妙文礼賛(魅惑の文言集)

自分の感受性くらい

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ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性ぐらい
自分で守れ
ばかものよ


『自分の感受性くらい』(茨木のり子)
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by Worthy42 | 2008-06-07 09:39 | 美句妙文礼賛(魅惑の文言集)