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Book of the Year 2009 フィクション

スウェーデン発の巨編ミステリ『ミレニアム1(上・下)』で始まった今年の読書生活。
多忙を理由に自ら胸に言い聞かせて夏場は読まない時期が続いたけれど、
結果として読んだ本は全部で61冊(フィクション49冊、ノンフィクション12冊)。

通常なら国内/海外フィクション・ノンフィクションに分けてベスト本を選定していくのだが、
今年は去年より20冊ほど読了した本が減ったので、国内と海外のフィクションはまとめてご紹介。
もちろん、ジャンルはすべてごちゃ混ぜのごった煮。

よほど惹かれた作品以外を除けば新刊は購入しないタチので、
毎年、師走に書店の棚を賑わすベスト本特集雑誌よりは時間の流れがちと緩やかなのでご容赦を。

さらに言えば、今月中に読了予定だった本に取り掛かれなかったので、
それらについては、残念ながらまた来年のこの時期にまとめるものとする。


さて、順位については昨年と比べて大いに迷った。
国内と海外を一緒くたにしたので、良作、怪作、傑作揃い(特に海外モノ)のなかでも、
「あれも!これも!」という内なる叫びを収拾して泣く泣く選外にした作品もあったし、
逆に、去年の『百年の孤独』、『ゴールデンスランバー』、『深海のYrr』、『チャイルド44』といった
瞬時に上から順位付けができるような(私にとっての)大傑作がなかったので、
ベスト10の選定も、その順位付けも、眺めるたびに変えたほうが良いのではと思い出す始末。

順不同ということでご覧頂ければ幸いです。

①『新世界より(上・下)』(貴志祐介)
②『フラグメント 超進化生物の島』(ウォーレン・フェイ)
③『ダイナー』(平山夢明)
④『時間封鎖(上・下)』(ロバート・チャールズ=ウィルスン)
⑤『犬の力(上・下)』(ドン・ウィンズロウ)
⑥『ダブル・ジョーカー』(柳広司)
⑦ 馳星周(『煉獄の使徒』、『9.11倶楽部』、『やつらを高くつるせ』)
⑧『告白』(湊かなえ)
⑨『虐殺器官』(伊藤計劃)
⑩ 京極夏彦(『姑獲鳥の夏』、『魍魎の匣』、『狂骨の夢』)

次点:『残影』(マイケル・マーシャル)、『ミノタウロス』(佐藤亜紀)

ちなみに、『ミレニアム』シリーズは、1~3巻まで全部読んでから評価する予定なので、
たぶん、来年のランクインになると思う。

①は、最後のオチが「あっ」と驚かせる出色の出来。前半の冗長さを吹き飛ばす。
人間の底知れぬ野蛮さ、傲慢さ、そして罪深さがとてもよく描かれていて、
思わず自問自答をせずにはいられない。SFながら読者を選ばない傑作。


②も同じくSFながら、こちらはクリーチャーもの。
映画になれば、B級モンスター・パニックに該当するので、私なら劇場に初日に見に行く。
同じ地球上で全く異なる進化の過程を進んだ生物がいたとしたら?という興味をそそられる
テーマ設定の勝利とも言えるのだが、創造性溢れる生物の図解も見て楽しい。


一昨日突然衝動買いした一冊が、グロさ満載の長編ノワール③。
携帯サイトで募集していた仕事に応募してヤクザに拉致された主人公は、
命からがらとあるダイナー(定食屋)のウェイトレスとして働くことに。
しかし、そのダイナーの顧客は殺し屋たちだった…。

本谷有希子の帯の文句がまさに言いえて妙。
「平山さんの人として間違っているところが好きです」
そう、こんなエグイ描写を嬉々として書けるなんて間違っている。
間違いなく、読者を選ぶ。


2000年代最高のSFと言われるのが、④の『時間封鎖』。
地球が突如巨大な特殊幕に覆われて、地球の時間が宇宙の一億分の一になるという設定が絶妙で、
それを機に世界中で続発する人間の醜い争いが非常にリアル。
①と②にも共通するのだが、SF的な設定ながら現在の人類の在り方からすれば、
起こりえると予測される展開が非常に現実的で身につまされる。


傑作映画『トラフィック』を思い起こさせるのが、30年にわたる北中米の麻薬戦争を描いた⑤。
今年の「このミステリーがすごい 2010」海外版1位に輝いた傑作。
作中、非業の死を遂げる登場人物の数のなんと多いことか。
老若男女、麻薬業者、政府関係者、警察関係者、宗教関係者、そんな区別なく須らく屠られる。
次第に悪も善も曖昧なものになり、正義を司る者さえ清濁併せ呑む状況に身を落とさねばならない。
そんななかで拠るべきものは…というありがちなテーマながら非常に読ませる。


昨年ミステリ市場を席巻した『ジョーカーゲーム』の続編短編集が⑥。
前述「このミス~ 2010」で国内部門2位に輝いたスタイリッシュなスパイ短編作。
爽快な読後感ながら、前作よりもダンディズム色が増した感あり。
異端のスパイ組織に属するスパイ達の人間味も垣間見えて、第3弾も読みたくなった。


⑦の日本が誇るノワールの旗手、馳星周は三作とも優れた作品だったので、作者名で。
『煉獄の使徒』はオウム真理教の内部競争と警察・政治家との癒着をモチーフにした渾身の一作、
『9.11倶楽部』は救命士が主人公の(馳にしては)ヒューマンノワール系。
『やつらを高く吊るせ』は政経界の大物のスクープを漁る出歯亀男が主人公のハチャメチャもの。
ノワール好きであれば、どれも三者三様の妙味で堪能できる。


昨年のミステリー界を席巻したのが湊かなえのデビュー作⑧。
勤務先の学校で娘を失った教師の冷酷な復讐劇といった趣で後味は悪いが、
教師をはじめ、登場人物の心理や主張にはそれなり筋道が立っていて説得力がある。
ただ、「教師がこの手段に訴えては…」という思いは消えない。
もちろん、そういう読後感へと誘うよう綿密に計算されたものだとは思うが、
もっとも忌むべき避けるべき復讐の方法ではなかったか。そういう意味でも後味の悪さは天下一品。


⑨は今年若くして逝去した日本SF界の新星、伊藤計劃の世紀末軍事SF。
気に入った理由は、主人公の思索に現実味があって妙に哲学的なところ。
どれだけ科学技術が発展しても人間の内に秘めた想いは科学ほどの進展を遂げない。
そんな当たり前のことを思索的に書き上げたものだから、
読み手もいつもよりいっそう考えさせられる。


食わず嫌いだった京極夏彦が⑩にランクイン。
いやはや、なんというか、ほんとにもう、螺旋階段をぐるぐる回るうちに、
昇っているのか、降りているのか、分からなくなる、そんな騙し絵中の登場人物になったかのよう。
読み出したら癖になると言う謂れが、身に染みて分かった。
とにもかくにも、2009年最大の発見と声を大にして言える作家の一人。
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by Worthy42 | 2009-12-31 13:32 | 一冊入魂(読書記録)

Book of the Year 2009 ノンフィクション

なんて仰々しく紹介するほど読んではいないので、正直どうかと思うが、
それでもフィクションと一緒くたに順位付けするのはさすがに忍びない。

というわけで、一年間に読了したわずか12冊(去年のほぼ半分!)のうち、ベスト5だけご紹介。

①『戦場の掟』(スティーヴ・ファイナル)
②『旅する力』(沢木耕太郎)
③『貧困大国アメリカ』(堤未果)
④上杉隆(『官邸崩壊』、『ジャーナリズム崩壊』)
⑤『ウォールストリートジャーナル―世界をめざした非凡と異端の男たち』(エドワード・E. シャーフ)

①はイラク戦争後、高額な給料と引換えにイラクで働くことを選んだ「傭兵」たちの実態を暴いた一冊。
軍人としてイラク戦争に従事し、生き永らえて母国で全うな生活を歩もうとしたにもかかわらず、
今度は「私兵」として再度イラクに赴くことを決意した男たちの壮絶な生き様には心打たれるが、
末期癌の父親、裁判に巻き込まれた弟を抱えながらもイラクに戻って取材を続けた作者の姿にこそ、
果てない狂気を感じてしまった。
人を殺すということ、人の死を目撃するということ、死の危険に常に晒されるということ、
人非人でない限り、人は「死」の重みに次第に耐えられなくなるようにできている。
だとすれば、人がこうも「死」に魅了されるのは、「死」に自ら近付こうとするのはなぜだろう。
そんなことに無限回廊の如く思いを巡らせた傑作。


②は若者の旅のバイブル『深夜特急』の作者が、
当時、そしてその後の旅を振り返って書き記したエッセイ。
講演会に駆けつけるほどのファンである私にとっては、垂涎の一冊。
旅が歳を経るとともにその有様を変容させていくのを身をもって体験しているので、
いろいろな意味で考えさせられた。
ちなみに私は旅(の類)の目的地に入ると、必ず書店と酒場を訪れるようにしているが、
それ以外の行動に関しては、20代初頭と比べれば、大分変わっているような気がする。
それが幸せなことかどうかは、未だ判別できないのだが。


アメリカの想像を絶する貧困の実態をレポートしたのが③。
アメリカン・ドリームは確かに存在するのだろうが、
彼の国で暮らすことはイカサマがまかり通るギャンブルに全財産を賭けるようなもので、
とてもじゃないが住んでみようとは思わない、そんな気にさせる現状が余すところなく記されている。
1年間の滞在経験だけでは知りえなかった実情を知るにつけ、
田舎で無邪気に暮らしていたあの頃の自分が幸せだったのかどうか、複雑な気持ちになったのだが、
わが国もこの国と同じ行く末を辿ってしまう可能性を考えると、暗澹たる思いに囚われるのだった。


安部政権下の閣僚たちの無能さと、日本のメディアジャーナリズムに蔓延る権威主義を暴露した
上記2冊は甲乙つけ難い良作だったので、4位は作者名で選んだ。
お粗末極まりない愚かな政治家と、権力臭を漂わせる唾棄すべきメディア。
今の日本を牛耳っているといっても過言ではない両者の実態はこの程度なのだと知らしめてくれる。
政権は民主党に移ったが改善の兆しはわずかで、記者クラブは撤廃どころか改善も捗捗しくない。
要は、権力に魅せられた男たちの既得権益の確保と優越意識(すなわち、嫉妬)に帰結するのだが、
その単純さゆえに非常にタチが悪い。たかだが政治家、たかだかメディア、に過ぎないのに。


アメリカの経済新聞、ウォールストリートジャーナルが産声を上げた日から
軌道に乗り出した80年代くらいまでを克明に描いたのが⑤だ。
一弱小業界紙から有力新聞紙にまで上り詰める過程で大きな貢献を果たしたブンヤ達が
意気揚々と描かれていてとても清清しい。
昔気質のこんな新聞屋たちが屋台骨となったのだなと感心させられる一方で、
新聞社に勤務していたので、やはりというか、記者たちの変人振りには親近感を覚える。
酔っ払って毎日昼ごろ出社する先輩や、エレベータ前で殴り合いをする先輩たち、
毎晩のようにスナックに足繁く通って愛人の世話をする上司たち。懐かしさもひとしおの一冊。
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by Worthy42 | 2009-12-29 23:43 | 一冊入魂(読書記録)

今週の読了帳(12・21~12・28)

<今週の読了帳>
・『小太郎の左腕』
評価:☆☆☆

・『ダブル・ジョーカー』
評価:☆☆☆☆

・『ダイナー』
評価:☆☆☆☆☆

<ただいま読書中>
・『犬の力』

思ったより本を読む時間がなくて(=酔っている時間が多くて)、
予定していた量の本を読み進めることができない(毎年のことだが…)。
それでも、たぶん、明後日の大晦日か元日にBook of The Year を発表できる・・・はずです。
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by Worthy42 | 2009-12-29 11:27 | 一冊入魂(読書記録)

Best of The Decade

今月上旬だったと思うが、スポイラでBest of The Decade の特集記事が掲載されていた。
ここ10年、つまり、NBAの21世紀最初の10年を振り返ったものなのだが、
これが実に興味深かった。

主なところは以下のとおり。

<2000年代の最優秀選手>
ティム・ダンカン(サンアントニオ)

<最優秀スターティング5>
スティーブ・ナッシュ(フェニックス)
コービ・ブライアント(ロサンゼルス)
レブロン・ジェームズ(クリーブランド)
ティム・ダンカン(サンアントニオ)
シャキール・オニール(クリーブランド)

<最優秀コーチ>
フィル・ジャクソン(ロサンゼルス)

<最優秀ジェネラルマネージャー>
グレッグ・ポポビッチ/R.C.ブフォード(サンアントニオ)

<最も成功したトレード>
シャキール・オニール(ロサンゼルス)
⇔ラマー・オドム、カロン・バトラー他1人+ドラフト権(マイアミ)

<最も成功したFA選手獲得>
チャンシー・ビルアップス(デンバー)

<最も失敗したFA選手獲得>
ジェローム・ジェームズ(ニューヨーク)

<最も失敗したドラフト指名選手>
ダーコ・ミリチッチ(ワシントン)

<最も成功したドラフト下位指名選手>
トニー・パーカー(サンアントニオ)

<最も象徴的な出来事>
・選手同士の乱闘騒ぎのあと、R.アーテスト選手がモノを投げつけた観客に殴りかかったこと

上記を見るにつけ、つくづく実感させられるのは、アメリカのスポーツジャーナリズムは、
個人の成績ではなく、優勝に大きく重みをおいているということ。

その象徴が、MVPに選出されたダンカン。
「Mr.Fundamental」と呼ばれるほど基本に忠実なプレイを淡々とこなすこのビッグマンは、
派手さに乏しく、エンタメ性から言えば、「物足りない」の一言に尽きるといわれ、
おそらく、コービやレブロンよりも身体能力や個人技は劣るだろうが、
主軸として優勝を4度成し遂げた業績は他の追随を許さない(うち、MVP3度)。

コービも4度優勝してはいるが、そのうち3度はオニールのサポート役でしかなく、
実質的にエースとしてチームを率いて優勝を掴み取ったのは昨季だけ(MVPも一度だけ)で、
最初の3度の優勝も99-01の2000年代初頭では、「10年の顔」としては物足りない。
NBA.COMでは逆にコービをMVPに選出していたが、その選択には私は賛成できない。

ちなみに、ベスト5に選ばれた5人のうち、レブロンを除く4人が30代だが、
オニールを除けば、未だ顕著な衰えの兆候は見えていないのは喜ばしい。
4人は今季もオールスターのスターターに選出されるだろうし、
(程度の差はあれ)それぞれが今季優勝できるチャンスを有しているのは
それにもまして喜ばしいことだと思う。

願わくば、まだ優勝の栄冠に辿り着けていない選手に勝利の女神が微笑みますように。

ひとつだけ確信を持っていえることは、
2010年から2020年の10年間の最優秀選手は、レブロン・ジェームズであるということ。
これはもうすでに今から宿命付けられていると言っても過言ではない。

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優勝トロフィの最も似合う男、ティム・ダンカン。実は五輪を狙えた優秀な元水泳選手だったりする。
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Mr.Fundamental と称されるその基本的なポストプレイは小学生も参考にすべきいいお手本。
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R.アーテスト(現ロサンゼルス、当時インディアナ)が観客に殴りかかる瞬間を捉えたスポイラの表紙。
アメリカスポーツ史上、最低最悪の出来事と言われた。

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by Worthy42 | 2009-12-28 23:29 | バスキチ(NBA)

肥後の国で

自ら発案しながら店の予約から車の手配、友人への連絡まで人任せという
最年長なのに甘え過ぎにもほどがあると自らを叱咤しながら迎えた忘年ツアー。

福岡、佐賀、宮崎、鹿児島から友人たちが日帰りで熊本に駆けつけ、
予想以上の大人数になって(怠惰な発起人なので知らなかった)楽しさが倍増したところに、
奄美大島の友人とも電話で中継をつなぐという粋な仕掛けに宴も一層の盛り上がりを見せる。

馬肉を貪り、温泉で悦に入り、酒に脳を侵食させ、再び馬肉に我を忘れた翌日、
ウコンの力は霊験あらたかだったが、軟骨のピアスを紛失し、ホテルに指輪を置き忘れては、
時が止まったかのような母校の相変わらずの佇まいに自らの年齢を錯覚、
ペルシャ料理に舌鼓を打ち、英語と独語が達者なイラン人コックと話し込む。

自分に限界を作ってはダメなんだよ、と、
かつてエンジニア養成業、ジュエリー販売業を生業にしていたコックは言う。

インドで10年、オーストラリアで10年暮らしてきた流浪の好々爺と交わした握手は、
彼の国の政治的・社会的苦境を乗り越えてきた屈強さが窺えるほど力強く、と同時に、
その笑顔やオーラから滲み出ていたのと同じ類の優しさが伝わってきて、
なぜだかとても泣きたくなった。

みんな、ありがとう。

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熊本県民(?)が選ぶ県内温泉一位だと。アンジャッシュのサインがあった。
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by Worthy42 | 2009-12-28 22:15 | 情熱と怠惰の断片(日記的)

Dear My Friend

10年ほど前にアメリカに留学していた頃の親友が帰国して突然来阪。

仕事の都合もあって、半日しか一緒にいれなかったが、
3年ぶりの再会を祝する雰囲気も5分で雲散霧消。
またしても抱腹絶倒の与太話で狂喜乱舞する。

仕事の話をしても、近況の話をしても、将来の話をしても、
必ずお腹を捩じらせるほどのバカ話に帰結するこの美しい関係は、神の恩寵を受けるに等しい。

私が知るなかで、最もバイタリティに溢れ、最も情熱に富み、そして、キレさせたら最も怖い彼女とは、
2、3年に一度の割合でしか会えないのだが、いつも童心に返って語らいあって、
そして、いつも人生の指針を与えられている。

今回は私の都合で会えないものと思っていたので、
一足早い、望外に素敵なクリスマスプレゼントだった。
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by worthy42 | 2009-12-23 23:34 | 情熱と怠惰の断片(日記的)

今週の読了帳(12・14~12・20)

<今週の読了帳>
・『戦場の掟』
評価:☆☆☆☆

・『告白』
評価:☆☆☆☆

・『夜は短し、歩けよ乙女』
評価:☆☆☆☆

・『野村ノート』
評価:☆☆☆


<ただいま読書中>
・『小太郎の左腕』
・『武装解除 紛争屋が見た世界』
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by worthy42 | 2009-12-21 00:47 | 一冊入魂(読書記録)

今週の読了帳(12・07~12・13)

今週は『このミステリーがすごい!2009』と『本の雑誌 2009年度ベスト10』を購入。
前もって購入しておいた『一個人』、『ダカーポ』、『ダ・ヴィンチ』の特集号と合わせて読み漁って、
年末年始に読む本を決めることにする。

ちなみに、『このミス2009』の国内、海外のベスト20に入っていた本で読了したものはゼロ、
『本の雑誌 2009年度ベスト10』の方でもベスト10内で読んだ本はゼロ、だった。

年末年始にまとめて本を読み漁るスタイルにしているせいもあるが、
それだけ私の読書スタイルが最新の流れに乗り遅れている表れであるのだが、
『このミス2009』の国内ベスト20で興味を引いた本は4冊しかなく、
そのうち今すぐに購入してでも読みたいと思ったのがわずか1冊しかなかった。
私の興味のある分野がいかに偏っているのか、誇らしいような情けないような複雑な気持ちになる。

ざっと見て、気になったのは、以下の通り(これまでに挙げた作品を除く)。

・『粘膜蜥蜴』
・『仮想儀礼』
・『ダイナー』
・『戦場の画家』
・『コーパスへの道』
・『よろこびの歌』
・『猫を抱いて象と泳ぐ』
・『ダブリンで死んだ娘』

で、年末年始用に購入したのは次の通り。

・『ダブル・ジョーカー』
・『小太郎の左腕』
・『犬の力(上・下)』
・『1Q84(1・2)』
・『月野さんのギター』
・『Top of The World』
・『戦場の掟』

あと、『グラーグ57』と『ユダヤ警官同盟』を買うかどうか迷うところ。

<今週の読了帳>
・『新世界より(上・下)』(貴志 祐介)
評価☆☆☆☆☆

今から1000年後の日本のとある町。
人々は呪力というサイコキネシス(念動力の一種)を駆使して
境界の張られた領域内で異類の生物と「共存」していた。
子供達は綿密に管理された社会で呪力を身につけるよう教育されながら大人への階段を昇っていく。
そんななか、忌み嫌われてきた突発的な事態が起こり、人類は破滅への一途をたどる。
選ばれた少女、渡辺早紀は意を決して未曾有の邪悪な奸計に挑もうとするが、
その過程で秘匿とされた、これまでの日本と世界の歴史と、人類に降りかかった禍を知って・・・


上下巻合計して1100ページにもなる大作ながら
怒涛のように押し寄せてくる異様な日本の未来世界にぐいぐいと引き込まれる。
そして次第に明かされる今の世界の崩壊と変容、ラストに明かされる人類の衝撃的な変遷に、
ただただ、言葉を失ってしまった。

現在、イラクで傭兵として生きる(そして死ぬ)人々を描いた『戦場の掟』を併読しているせいもあって、
人類の業というか、人が人を傷つけるがゆえに人でいられなくなる空間が世界各地で続発すれば、
今作品ほどのSF的変容を遂げずとも、人類社会は確実にかつ残酷にその寿命を自ら縮めるはずで、
そういう意味では、人間存在の極限的な悪に限りなく迫りつつ、
それでも性善説を尊び、人間の究極的な善に大きな期待と希望を見出してもいる。

先の読めないミステリ的な要素も十分にちりばめた壮大的な作品であり、
「第29回日本SF大賞受賞作」という誉れに偽りなし、のSF大傑作。

<ただいま読書中>
・『戦場の掟』
・『夜は短し歩けよ乙女』
・『野村ノート』
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by worthy42 | 2009-12-13 22:29 | 一冊入魂(読書記録)

反面教師

先日、BRICSを中心とした新興国の担当省官庁の関係者が来日して
関連業界の動向等に関して講演会をするというので聴講に出かけた。

私はアルゼンチンの講演会の担当だったのだが、
スピーカーは弁護士で、聴衆の前面で話すのに慣れているせいか、
さすがに英語の抑揚の付け方が達者で、講演もわかりやすかった。

ただ、他国の講演会を聴講した同僚すべてが漏らしていたのだが、通訳には参った。

おそらく、業界の専門家でもなければ、関連分野の経験もなかったのだろう、
業界人にとっては必須と思われる単語を異なる意味に訳していたのだが、
それはまだしょうがないという気が私自身はしないでもない。

問題は、通訳のスピードが追い付いていないこと、だった。

話し手の言葉尻に通訳が追い付かないものだから
詰まった個所や結論部分をうやむやに言い濁して、次の文章へ移ろうとするため、
肝心の内容がいま一つ分からぬまま、消化不良の連続で酔いそうになった。
おそらく、訳していた当人も「これはマズイ」という思いで焦っていたのだろう、
徐々に声からも自信のなさが伝わってきて、ますます何を言っているのか聞きとりにくくなっていった。

アルゼンチン人のスピーカーは英語がまだきれいだったので
途中からは同時通訳用のヘッドフォンを外して英語を聞いていたのだが、
英語の訛りが強くて聞きとりにくかった話し手の回に参加した同僚は
英語に逃げるわけにもいかず、かといって日本語も何を言っているのか分からず、
「苦行以外の何物でもなかった」そうだ。

閑話休題。

仕事柄、業務で送るメールの9割は英語で書くのだが、
先日、緊急の用件で急遽、11の国の同業者に見積もり依頼のメールを送る羽目になった。

翌日までに返信をくれるようにお願いしていたので、
期限内にすべての同業者から返事をもらったのだが、
その返信内容の書き方は千差万別で興味深かった。

箇条書きで3つの質問をしていたのだが、
同じく箇条書きで3つの答えを明快に書いてきたところもあれば、
面倒くさかったのか、こちらが送った送信メールの下に回答を書いてきたところもあった。

PDFの添付資料をつけてそれを参考にしてくれというところもあれば、
メールの文章に料金表を直に貼って返信をよこしてきたところもあり、
PDFの添付資料に加えて、その説明をメールで事細かに説明してきたところもあった。

料金表にしても、合計料金だけをちょこんと記すところもあれば、
合計料金とその料金の内訳を仔細に記載してきたところもあった。

欧州で適用されるとあるルールをさも当然のように記してあるメールもあれば、
そのルールがどんなものでどれだけの国に適用されるものであるのか、
至極丁寧に記してあるメールもあった。

そもそも、見積もり依頼に対して、「見積もりのご依頼ありがとうございました」
「お問い合わせ頂きましてありがとうございました」などという文章でメールを始めるところもあれば、
何のお礼も挨拶もないところもあった。


たかが言葉、されど言葉。
たかがメール、されどメール。

言葉の持つ意味とは、サービスの本質とは、どんなことを言うのか、
1つの文章や1通のメールからだけでも十分に判断できるのだなと改めて考えさせられた。
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by worthy42 | 2009-12-13 21:39 | 情熱と怠惰の断片(日記的)

今週の読了帳(11・30~12・06)

『一個人』、『ダカーポ』の「今年最高の本」特集号を購入したのに次いで、
『ダ・ヴィンチ』の「Book of The Year 2009」号も購入。

残るは『このミステリーがすごい』と、『本の雑誌』の特集号を買うのみ。
来週末には両号とも書店に並ぶのでこの2冊と合わせて5冊をまとめ読みして
年末年始に読む本を決める予定。

・・・だったのだが、『1Q84』(村上春樹)を中古で発見して思わず購入してしまう。
もともと村上春樹がそれほど好きではなく、読んだ本も4、5冊ほどで、
もっとも印象に残っているのがオウムサリン事件の被害者の声を集めたインタビュー集、
『アンダーグラウンド』なのだから、我ながら「春樹熱」の低さが窺える。
(ただし、翻訳者としての「ムラカミハルキ」には、とても注目している)

それゆえ、いくら巷で騒がれようとも文庫落ちして読もうと思っていたのだが、
たまたま足を運んだ古本屋で7割引きで発見したのでつい買ってしまった。

ただ、読破するのにとても時間がかかりそうな長編を2冊も購入してしまったので、
読書計画を大きく変更するはめに。ノンフィクション巨編をやめて新書にしようかな。

少なくともハルバースタムの『ザ・コールデスト・ウィンター 朝鮮戦争(上・下)』はまたの機会に。
やはり、未だ読みかけのピューリッツァー賞受賞作『ベストアンドブライテスト』を読了してからにする。

ということで、決定したのは今のところ次の5冊。

・『ダブルジョーカー』
・『小太郎の左腕』
・『1Q84』
・『月野さんのギター』
・『Top of The World』


<今週の読了帳>
・『ミノタウロス』(佐藤亜紀)
評価:☆☆☆☆

20世紀初頭、ロシア革命前夜で混迷を極めるウクライナを舞台に、
田舎地主の息子ヴァーシャは故郷を飛び出し、暴行、略奪などを重ねて
戦時を強かに生き抜くも破滅に向けてひた走る・・・


「本の雑誌」の2007年ベスト1にして、第二十九回吉川英治文学新人賞受賞作。
ピカレスク・ロマン+ノワール+アナーキー小説といった趣で、
成金地主のドラ息子ながら獣性全開で悪行の限りを尽くす主人公の陰鬱なストーリーなのに、
佐藤亜紀独特の優美で華麗な日本語の表現もあって、不思議と静謐で豊穣な読後感をもたらす。

第3回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した『バルタザールの遍歴』でも感じたのだが、
血で血を洗う凄惨で野蛮極まりない内容を佐藤ほど優雅に描く筆力を備えた作家を他には知らない。
というより、佐藤の一連の作品を読むにつけ、同じ日本人が書いた作品だとは到底信じられないのだ。

私個人にとっては、沢木耕太郎のノンフィクションを除けば、
2度、3度読むのに耐えうる日本でただ一人の作家の傑作。
(とはいえ、読者を選ぶ。まずは、『バルタザールの遍歴』から試すのがおススメ)


<ただいま読書中>
・『極限捜査』(オレン・スタインハウアー)
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by worthy42 | 2009-12-06 20:36 | 一冊入魂(読書記録)