ボクサーとトレーナーの絆は、
水ほど薄くもなく、血より濃いものでもない。
むしろ、「血」そのものなのだ。
その意味においては、
血を流せぬボクサーとトレーナーの関係は
もはや成り立っているとはいえない。
トレーナーが最高のカットマン(止血)を兼ねるならなおさらだ。
(以下、ネタバレ)
死闘の影響でもう二度と血を流せなくなった女性”ボクサー”(ヒラリー・スワンク)は
名カットマンでもある老トレーナー(クリント・イ-ストウッド)に最後の仕事を頼む。
トレーナーは苦渋の決断のうえ、彼女の願いを聞き入れ、実行に移す。
”止血”すると同時に、リングへとタオルを投げ入れ、
彼女の”戦い”を止めさせ、リングを去った。
もう二度と一緒にリングの上で夢を見ることができなくても、
二人は最後の最後まで徹底してボクサーとトレーナーとして戦い、
それゆえ互いの信頼は微塵たりとも揺らぐことがなかった。
骨の髄までボクシング人だった師弟の固い絆を描いた、
慟哭を誘うその内容ゆえに二度目を見るのが躊躇われる傑作。
ヒラリー・スワンクは同作で「ボーイズ・ドント・クライ」に続く、
2度目のアカデミー主演女優賞を受賞。
ミリオンダラー・ベイビー
/ ポニーキャニオン
ISBN : B000AC8OV0
評価:AA