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ツォツィ

悪名高い”アパルトヘイト政策”がその爪痕を残す、
南アフリカの首都、ヨハネスブルクのスラム街。

不良(ツォツィという意味)と呼ばれる名もなき少年の手の動きを一日追えばこうなる。
アイスピックを握り、老人の胸を刺し、仲間を殴り、拳銃で人を撃ち、金を掴む。

だが、盗んだ車に生後間もない赤ん坊がいることに気付き、
自らの家に連れ去ったことから、
体験したことのない新たな動きが手に課されることになる。

赤ん坊を抱く、という動きが。

小さな、小さな、貧弱だが崇高な命の灯火を
自らの2本の細い腕に感じることになった瞬間から、
沸々と込み上げてくる思いが手から胸へと伝わってくる。

言葉では説明できない、命の重みが。

甲斐甲斐しく世話をしていく中で次第に変わっていくツォツィは
自らの不幸な生い立ちを顧み、
赤ん坊の未来のために両親の元へ返すことを決意する。

だが、赤ん坊を父親に返すべく手渡そうとした瞬間、
込み上げてくる感情に手は震え、涙が止まらなくなる。

腕に感じていた小さな温かみが、永遠に失われる―――。
そのとき、ツォツィは大粒の涙をこぼしながら
天へと何かを包み込むように、懇願するように、震える手を掲げた。

失われた重さの大きさに、
そして、奪ってきたものの大きさに、
はたと気付いた瞬間だった。

世話をすることで生きた生に触れ、
それを手放さざるをえないときに、命の意味を知った。

彼のその後の歩みがどんな道を辿ろうとも、
その手はもう二度と血に染まることはないだろう。

生に触れ、命を知るとはどういうことなのかを教えてくれる、
2006年アカデミー外国語映画賞を受賞した名作。
『ツォツィ』
評価:AA
by Worthy42 | 2008-03-20 19:30 | 銀幕に溺れる(映画ノート)
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