年末年始にかけてPCが二度ダウンして二度初期化し、つい一昨日復元したばかり。
実家のPCはやたらめったら遅くて、新年一発目の投稿は早くも月半ば。 ということで、とにもかくにも、明けましておめでとうございます。 今年も皆様にとって素敵な一年にならんことを。 前置きはそれくらいにして、 今更だが昨年のBook of The Year 2011 フィクションを発表。 ![]() ①『ジェノサイド』(高野和明) ②『エウスカディ(上・下)』(馳星周) ③『湖は飢えて煙る』(ブライアン・グルーリー) ④『悪の教典』(貴志祐介) ⑤『エージェント6(上・下)』(トム・ロブ・スミス) ⑥『特捜部Q 檻の中の女』(ユッシ・エーズラ・オールスン) ⑦『卵をめぐる祖父の戦争』(デイヴィッド・ベニオフ) ⑧『獣の奏者(3、4)』(上橋菜穂子) ⑨『異星人の郷(上・下)』(マイクル・フリン) ⑩『反撃(上・下)』(リー・チャイルド) 昨年読んだ本は傑作・良作が多かったが、その中でも①はダントツだった。 「このミステリーがすごい 1位」「週刊文春1位」などと謳われているが、 斜に構えずとりあえず読んでみることをおススメする。 馳星周の最高傑作ではと読了後に興奮しきりだったのが②。 スペイン・バスク地方といったら一度は訪れたみたい土地だが、 当時を忍ばせる現地の濃密な雰囲気が字面からたっぷりと醸し出されている。 2011年は早川ポケットミステリの当たり年だと業界では言われているらしいが、 私もそれに同感で、このベスト10にも③、⑥、⑦と3冊も入っている。 好みではなかったのでベスト10からは外したが、同じハヤカワポケットミステリの 『二流小説家』は、識者が選ぶ各賞で1位に輝くなど絶賛されている。 個人的には③がベスト。著者が新聞記者という経歴の持ち主のせいか、 文章が理路整然として隙がないため、さらさらの血液の流れよろしく脳に入ってくる。 訳も秀逸。見習いたい。 ④は2010年の「このミステリーがすごい 1位」の作品。 後半の怒涛の展開はパンチが効いていてすごい。 『DINER』と『バトルロイヤル』を足して2で割ったような衝撃が味わえる。 レオの三部作の完結編が⑤。上巻すべてが壮大な序章のよう。 レオには幸せになってほしいという一読者の望みが・・・。あとは読んでからのお楽しみ。 ⑧は相変わらずの安定感とロマンに満ちている。 とても子供向けとは思えないのだが、やはり自分の子供にもいつか読んでほしいと思う。 なんとなく尾を引くのが⑨。取り立てて劇的な展開があるわけではないのだが、 設定の妙が最後まで興味を駆り立てて、読後の今でさえ不思議な余韻を残している。 ⑩はリー・チャイルドの<ジャック・リーチャー>シリーズ第2弾。 現代版のハードボイルドの趣で外れなしの面白さ。 これで『キリング・フロアー』、『前夜』に続きシリーズ3冊目。 残る邦訳書は第3弾の『警鐘』のみなので今年中に読んで、未邦訳分の刊行を待とう。 ▲
by Worthy42
| 2012-01-14 00:42
| 一冊入魂(読書記録)
フェイスブックとツイッターを始めて以降は、
主戦場をそのふたつに移してきたせいもあってブログの更新が大分遅れてしまった。 (フェイスブックではもうBook of The Year 2011 を発表済) とはいえ、更新の理由が一番の理由は忙しさとPCの故障。 来年はさらに忙しくなりそうなのでどれだけの頻度で更新できるのか、 甚だ心もとないが、折を見てアップしていこうと思う。 ということで、Book of The Year 2011のノンフィクションなのだが、 今年読んだノンフィクションの冊数は実はほんのわずか。 もしかしたら両手で足りる数かもしれない。 特に新書は原発関連以外はほとんど読まなかった。 ここ数年、減少傾向にあるので来年はなるべく読むように心がけたい。 ![]() ①『WHEN THE GAME WAS OURS』 ②『鯨人』 ③『スリー・カップス・オブ・ティ』 ④『采配』 ⑤『ロストシティZ―探検史上、最大の謎を追え』 NBAのオールドファンにとって①は望外の贈り物のような至高の一冊。 ②はクジラと共に暮らす人々を追ったドキュメント。クジラを殺し食すのも人間の業だが、 それを犯罪行為に抵触する暴力で過激に取り締まるのもまた人間のエゴだ。 ③、⑤は目的は違えど、異国での過酷な日々を生き抜く主人公の折れない心に脱帽。 ④は野球監督のビジネス書ながらベストセラーに。 孤高の男の生き様ながら心に刻みつけておきたい教訓が豊富。 ▲
by Worthy42
| 2011-12-31 00:49
| 一冊入魂(読書記録)
先月からフェイスブックとツイッターを本格的に始めた。
もともと環境の変化とともにそれまでの人間関係を一度リセットするタチなので、 アメリカ発のソーシャルネットワークサービスなんぞ軽視していたのだが、 フェイスブックの人と人を結びつける力といったら、予想以上だった。 12年前の米留学時代のスウェーデン人の知人と繋がったのを始め、 大学時代の友人や前職の知人と5-10年ぶりにやりとりするなど、 ご無沙汰していた人々に久々に「再会」できた。 目下のところ、ツイッターは情報発信および収集のために、 フェイスブックは旧交を温めるためと新たな関係を構築するために、 ぐらいな感じで使用しているのだが、いやはや、その威力たるや恐るべし、である。 フェイスブックは本名(漢字ではなくアルファベットで)、顔出しでやっているので よかったら探してやってください(リアルでない方でもどうぞ)。 と悠長なことを言いつつ、先月は多忙を極めた。 私的なプロジェクトのために中旬以降は週末もなし。 よくよく考えたら今月も明日から週末もフル稼働しなければならない。 文字との孤独な戦いの上に時間も半端ないほどにかかる、 なんとまあ大変な職業なのだと今更ながら痛感。でも楽しいけどね。 前置きが長くなった。本の話を。 古本でいいと思ってたんだが、買ってしまった。 ![]() 先日、ロマン・ポランスキーの『ゴースト・ライター』を見たせいもあるが、 冒頭から真実かどうか甚だ疑わしい。 ---In the final year of my presidency, I began to think seriously about writing my memoirs. ときたもんだ。 自伝を書いたがために挿入した一節のような匂いがプンプン。 とはいえ、これはこれでブッシュ政権を振り返る貴重な一冊なので 心して読み進めていきたい。 ・『特捜部Q ―檻の中の女―』(ユッシ・エーズラ・オールスン) 評価:☆☆☆☆ コペンハーゲン警察の新設された部署に左遷された刑事とその相棒が 過去の未解決事件に取り組むことになり、5年前の自殺と片付けられていた 女性議員失踪事件の再調査に着手するうちに隠された真実に近づき・・・ という北欧発の(やや)ハードボイルドサスペンスの良作。 主人公よりも相棒の亡命シリア人アサドの素性が気になって仕方がないという 脇役の存在感が光る一冊。 北欧とドイツで数十万部売れた人気三部作シリーズの第一弾で、 次回作は今月10日に発売の予定。 ・『卵をめぐる祖父の戦争』(デイヴィッド・ベニオフ) 評価:☆☆☆☆ 作家のデイヴィッドの祖父レフは戦時中の1942年、2人のドイツ兵を殺したらしい。 今レフの口から語られる冒険譚。それは、軍の大佐の娘の結婚式のために 卵を調達するというものだった・・・ 正直、タイトルを見て「なんなんだこれは」と思っていたのだが、 内容をそのものズバリ言い表していた。 レフと、ともに卵を探す羽目になった饒舌な女好き、コーリャの掛けあいがユーモラスで、 戦時下の過酷で悲惨な現実に曝されながらも健気に生き抜く2人の姿がとても眩しい。 戦争と友情について考えさせられる秀作。 ・『記者魂』(ブルース・ダシルヴァ) 評価:☆☆☆ 街で続発する連続放火事件を追う地元紙の記者。 事件を追う内に裏に隠された意外な真相に辿り着いて・・・。 邦題の割には主人公のマリガンには新聞記者としてのダイナミズムに欠けた印象が。 ロージー、メイソン、グロリアといった脇役の方がよっぽど記者らしい。 ジャーナリズム魂に満ちた一冊かと期待すれば肩透かしを食らう。 41年間も記者を務めてきたという著者の経歴に、もっとジャーナリストらしい 正統派なストーリーを勝手に期待してしまっていたので、正直、物足りない。 <現在読了中> ・『Decision Point』(George W. Bush) ▲
by Worthy42
| 2011-11-06 00:09
| 一冊入魂(読書記録)
・『スリー・カップス・オブ・ティー』(グレッグ・モーテンソン、デイヴィッド・オリバー・レーリン)
評価:☆☆☆☆☆ 「全米で360万部突破。ニューヨークタイムズ・ランキング30週間1位。 ベストセラーリストに154週ランクイン」等々の誉れ高き話題作。 世界一の難所とも言われるK2の登山に失敗した一人のアメリカ人青年が、 パキスタンの山間の村で助けられた人々の優しさに触れるなかで 恩返しすべく学校を作ることを夢見て、様々な困難に遭いながらも果敢に立ち向かっていき・・・。 久しぶりに読んだ感動ノンフィクション。何より主人公が同じ30代半ばってとこにグッと共感。 何千何万キロも離れた異国の学校建設にすべてを投げうって、 文字通り「命を賭けた」その覚悟に惚れた。 これが10代や20代だったら「若さの勝利だね」と納得するだけで終わっていたかもしれないが、 同じ年の周囲の人間や残された時間を考えると、「ボランティア」に近いこと(この著者の場合、 少なくとも軌道に乗るまでは「仕事」とは言えない)に余生を費やそうと決断するのは、 同じ世代の人間にはほとんどできそうにない。少なくとも私にはできないし、そして、したくもない。 そういう意味で、この著者の決断の重さは計り知れないものがある。 ましてや、学校を建設している間に、あの9.11テロが勃発しており、 パキスタン、そして、アフガニスタンが米国の敵国となっていくなかで この米国人の行動には「なぜそこまでできるのか?」嫉妬するくらい頭が下がる思いだ。 とともに、著者に多額の援助をした資産家を含め、こういう人々が彼の超大国にまだいる (というか、アメリカだからいるのか?)ということにも心からホッとした。 一読の価値有り。 ・『湖は飢えて煙る』(ブライアン・グルーリー) 評価:☆☆☆☆☆ 2010年アンソニー賞最優秀ペイパーバック賞とバリー賞最優秀ペイパーバック賞の2冠を達成した、 アイスホッケーがすべてという田舎街の元伝説的コーチの事故死にまつわる傑作ミステリー。 とある湖に打ち上げられたスノーモービルは10年前に別の湖で事故死したとされる その町のアイスホッケーチームの名コーチが事故当日に乗っていたはずのものだった。 「いまさら過去の忌まわしい事故を掘り返すな」という街全体の不穏な空気のなか、 元教え子にして新聞記者のガスは、苦渋に満ちた自らの選手と記者としての過去と対峙しながら 謎を一つ、また一つと解いていき、誰も望まない真相に一歩一歩近づいていく・・・。 著者はピューリッツァー賞の受賞歴もある記者にして、ウォール・ストリート・ジャーナルのシカゴ支局長。 ということもあって、なによりもまず文章が非常に理路整然としていて上手いなと唸らされた。 おそらく英語でそのまま原書を読んでもかなり読みやすかったはず。 そして、題材がアイスホッケーというスポーツものであることも私的には面白かった。 たとえ2軍のプロだろうが、学生のアマチュアチームだろうが、 それがおらが街の全てだ、という田舎街が、アメリカにはある。 (昔留学していたモンタナ大学のアメフトチームの試合には、 街の人口のかなりの人(毎試合6000人ほど)が集まっていた。もちろん、 ヨーロッパの多くの街ではフットボールがそれに当たるのだろうが) そんな街で神聖なものとされたスポーツの名物コーチの死に隠された噂や過去。 「死者を冒涜するような真似はするな」という街全体の圧力に屈せずに立ち向かいながら、 自身の犯した過ちともけりを付けるべく奔走する記者の熱い魂が圧巻。 ミステリーとしては、総合的に見れば近年でも出色の出来。 ・『原発の闇を暴く』(広瀬隆、明石昇二郎 ) 評価:☆☆☆☆☆ ・『原発のウソ』(小出裕章) 評価:☆☆☆☆☆ 上の作品は長らく脱原発運動に携わってきたジャーナリストが、 原発の建設と推進に関わった電力会社、政治家、御用学者、マスコミといった 「原発ムラ」ならぬ、「原発マフィア」を実名で激しく糾弾して告発した一冊。 下の作品は京都大学原子炉実験所助教授として長らく原発の恐ろしさを訴えてきた 専門家(そのせいで出世を阻まれ続けた)による原発に関わるあらゆる嘘を徹底的に暴いた一冊。 この地震大国に暮らす我々には必読の書。 原発がいかに不要でリスクの高いものであるかよくわかる。 読了してなお、たぶん、原発の新設は防げるかもしれないが、 脱原発は今の日本人には無理だと個人的には思う。 物理的に可能なのだろうが、原発マフィアの抵抗が激しすぎてその志は頓挫させられそうな気がする。 日付までは覚えていないが、夏ごろの西日本新聞で、 「脱原発をすべきだ。それで少しくらい日本産業が停滞してもかまわないではないか」といった 内容の社説が掲げられていた。 私もその意見に同意する。 たとえ、脱原発のせいで、日本が経済的に困窮し(どうせ今でも既にそうだ)、 一流国の座に返りつくことができないほど産業が後退したとしても、それはそれでいい。 買い物に行くたびにまるで中国産のものを見るような目で福島近県の農作物で見たり、 魚を口にするたびに放射線は本当に大丈夫だろうかと怯えるような日々にはうんざりだ。 地方に金をばらまく代わりに、数百年もの間、放射線のリスクを負わせておいて 「想定外でした」だけで済ませて都会だけ「幸せ」を享受するようなシステムなんて、 北朝鮮やロシアのような闇国家とたいして変わらないだろう。 建設前の調査で危険性を黙殺して建てたような日本全体を死滅させかねない危険をはらんだ 原発と引き換えに形だけの一流国としての座を保持するくらいなら、 今の快適さや便利さと引き換えに、原発のない恒久的な安全を手に入れる方が はるかにマシだとさえ思えないのなら、人間だと言えるだろうか? 私のように、政府やマスコミ等公権力をほとんど信用していない人でなくても、 原発の正しい知識を身につけたい人は一読された方がいいと思います。 私のモットーは「最善を期待せよ、されど最悪に備えよ」ですが、 こればっかりは、最善など期待できません。 なんせ、最悪に非常に近い状況なうえに、最悪の度合いが尋常ではないので。 <ただいま読書中> ・『卵をめぐる祖父の戦争』(デイヴィッド・ベニオフ) ▲
by Worthy42
| 2011-09-23 12:24
| 一冊入魂(読書記録)
梅雨前に某誌で発表された翻訳コンテスト(仕事外の分野)に何とか次点で滑り込んだので
ますます本腰を入れて取り組もうとしていたのだが、 引越から新生活に追われていたせいで、ようやく最近になって勉強する体勢が整ったばかり。 というわけなので、本のために確保できる時間はなく、 新聞の購読もとりあえず今のところは控えているので これほど活字に触れていない夏というのは、人生でも記憶にない。 だからというわけでもないが、先日遅ればせながら購入したスマートフォンGalaxy S2 SC-02Cで アプリを活用してニュースと社説を通勤時に読むのが日課になっている。 Google Newsはここ数年PCのトップページに設定しているので今更感動はないが、 全国紙だけでなく地方紙の社説を日々届けてくれる「社説リーダー」や 世界中の都市の新聞を読める「World Newspapers」というアプリにはとてもお世話になっている。 他にも色々と生活で役に立つ機能が満載なので重宝していることは間違いないのだが、 それでも家でハマっているのはこういうアナログ系のもの(ボードゲーム)だったりする。 ![]() ・・・閑話休題。 とはいえ、少しは本の話をということで、最近チェックした書籍は以下の通り。 ・『犯罪』(フェルディナント・フォン・シーラッハ) ・『MM9―invasion―』(山本弘) ・『ヴァンパイアハンター・リンカーン』(セス・グレアム=スミス) ・『夜明けのパトロール』(ドン・ウィンズロウ) ・『An Atlas of Anatomy for Artists』(Fritz Schider) ・『マーフィーのケンブリッジ英文法(中級編) 』(Raymond Murphy) 今年の夏休みは9月にずれ込んだので、さてどれを読もうか長考中。 <追記> 本、読んでた。 ・『幻獣ムベンベを追え』(高野秀行) 評価:☆☆☆ コンゴ奥地の湖に生息すると伝えられる謎の怪獣モケーレ・ムベンベを発見すべく立ち上がった 早稲田大学探検部11名のハチャメチャな現地での40日間を描いたノンフィクション探検記。 ・・・そりゃ、いるわけないよな、とハナから疑っていたが、 仲間と怪獣を追ってジャングルで生死を彷徨うような青春も悪くない、とは思った。 ▲
by worthy42
| 2011-08-01 23:05
| 一冊入魂(読書記録)
あれやこれやと忙しくて5月に読んだ本をいくつか思い出せないが、
それでもなかなかの良書揃いで読みごたえがあるものばかり。 なかでも集英社新書の『鯨人』(石川梵)は傑作だった。 ・『鯨人』(石川梵) 評価:☆☆☆☆☆ ![]() 以前に新聞の書評で5つ星評価だったの見て気にかけてはいたのだが、 購入しようと決意した直接的なきっかけとなったのは、 和歌山県太地町で脈々と受け継がれている捕鯨を扱ったNHKのドキュメンタリーを見たことだった。 伝統というに及ばず、地元経済を支える重要な産業となっている捕鯨を生業にする人々が、 傲慢かつ理解不能な理由で妨害を続ける反捕鯨団体の不当な圧力に思い悩む様子を描いていた。 そんな経緯があったため、以前から興味を惹かれていた本書を購入したのだが、 本書で登場する捕鯨と太地町の鯨漁の方法は大きく異なる。 太地町では船団で鯨を浅瀬に追い詰めるのに対し、 本書のインドネシア・レンバタ島に暮らす人々は船の上から「えいやっ」とばかりと飛んで(文字通り) 鯨の急所に銛を一本打ち込むのだ。 この危険極まりない漁法での死闘は数時間にも及び、 そこには生と死の交錯した濃厚な香りが漂ってくるが、 それ以上に一種の命の(あるいは命を賭すことの)崇高さというか、神々しさのようなものを、 海上にいずとも机上でも感じずにはいられなかった。 鯨漁で成り立つレンバタ島独特の経済的な仕組みも、旧き良き日本を想起させて興味深い。 著者は写真家らしいので写真集の方もチェックしてみたい。 ・『ロスト・シティZ 探検史上、最大の謎を追え』(デイヴィッド・グラン) 評価:☆☆☆☆ 1925年にエルドラード(黄金郷だったっけ?)と呼ばれた南米・アマゾンの幻の都市「Z」を求めて消えた、 冒険家パーシー・ハリソン・フォーセットの軌跡を追ったノンフィクション。 フォーセットはあの「インディ・ジョーンズ」のモデルとなった人らしく、 二度と戻らなかった彼の行方は「20世紀探検史上、最大の謎」とされているらしい。 1900年代はアマゾンは世界中にわずかに残された神秘的な場所の1つとされていたらしく、 危険を顧みずにその未開の地を果てまで探ろうというロマンの虜にされてしまうのには共感できる。 この当時からの西洋人ならではの、先住民に対する傲慢な視点は鼻につくし、 当時のアマゾン探検の過程が想像以上に劣悪だったことに辟易してしまうが、 それでも、読後は、きっと誰もが似たような冒険(無理だけど)に思いを馳せることだろう。 ・『獣の奏者3 探求編』 評価:☆☆☆☆ ・『獣の奏者4 完結編』 評価:☆☆☆☆ 筆者いわく、2作目でもともとは完結していた作品に、新たに着想を得て仕上げた一種の続編。 奏者エリンの現在、人間と王獣、闘蛇との関係、敵国ラーザとの戦争など シリーズ読者なら気を揉んでいた「その後」のストーリーが余すところなく書かれていて圧巻の一言。 読後、不覚にもぼうっとしてしてその世界観に浸る羽目になってしまった。 子供用SFファンタジーと侮るなかれ。 <ただいま読書中> ・『幻獣ムベンベを追え』(高野秀行) ・『1Q84 BOOK 1』(村上春樹) ▲
by worthy42
| 2011-06-18 10:28
| 一冊入魂(読書記録)
早いものでもう4月も終わり。2011年も3分の一が終わったことになる。
今年はいろいろなことで「初めて尽くし」が多い一年となりそうで、 特にこの春から夏にかけては、いろんなイベントのオンパレード(←死語か)。 読書にかまけている時間どころか、書店をじっくり見て回る時間すらないのだが、 それでも惹かれる本にはできるだけ時間を割いていきたいと思う春日和。 <4月の購入本> ・『ジェノサイド』(高野和明) <4月の読了帳> ・『ジェノサイド』(高野和明) 評価:☆☆☆☆☆(飛びぬけ) ![]() 父親を不慮の事故で亡くしたばかりの創薬化学を専攻する大学院生・研人は、 死んだ父親からのメールを見て、父親が行っていた研究の痕跡を辿っていく。 一方、イラクで警備要員として働く米国陸軍特殊部隊上がりのイエーガーは、 難病に冒された息子の治療費を稼ぐためにアフリカ・コンゴでの秘密任務に就く。 やがて2人は共通の「もの」のために交わっていく・・・ アマゾンのレビューで全員が5つ星評価であることからもわかるように、 間違いなく2011年のベスト本になりそうなエンターテイメント大傑作。 冒険譚あり、異人種間の交流譚あり、親が子を、子が親を思う親子譚あり、 そして、現生人類の在り方を問うロマンに満ちたSF的進化論の要素もある。 作中に登場する米国大統領と副大統領は、明らかにブッシュとチェイニーを模しており、 彼らの言動や登場人物の彼らに対する態度には作者自身の強い主張が伺え、個人的には共感できる。 特に、イラク戦争の見方(=核兵器の存在ではなく、石油関連の利権のために起こした)については、 日経の終面に掲載中の「私の履歴書」という半生を振り返る自伝がちょうどブッシュの回で、 毎回読むにつけ、「何とまあ薄汚い人間の屑なんだ、こいつは」という読後感に浸っているので、 まさにわが意を得たりという気になった。 それはさておき、人類の歩みにおける人間の位置づけを顧みる意味でもとても有意義なもので、 これはこの10年間に読んだ本のなかでも「至高の一冊だ」と胸を張っておススメできる作品だ。 ・『WHEN THE GAME WAS OURS』(Larry Bird, Earvin Magic Johnson etc) 評価:☆☆☆☆☆ マイケル・ジョーダンが登場する以前の80年代のNBAの旗手として大活躍した、 ボストン・セルティックスのラリー・バードと、ロサンゼルス・レイカーズのマジック・ジョンソンの 2人の大スターの生い立ちと交流を丹念に織った優れたノンフィクション本。 「ライバル」という言葉はまさにこの2人のためだけにあるのだと思わせるような、 学生時代からプロへと続いた苛烈な競争関係は、残念ながら現在のNBAには見当たらない。 ジョーダンにすら「ライバル」といえる対等な選手はいなかったのだが、 この理想とも言える選手同士での敵対的なライバル関係が存在しないことが、 今のリーグの魅力が乏しいことの一因であることは間違いないだろう。 互いを倒すがために互いに身を磨り減らせ、しのぎにしのぎを削った間柄というのは なんと純潔な眩いばかりの輝きを放つものかな、そう思わせる2人の関係が羨ましい。 薬物などの暗いイメージに囚われて暗黒時代といわれた70年代の影を ものの見事に払拭した功労者にして最大のライバル2人の熱く激しい戦いの全記録。 ・『反撃(上・下)』(リー・チャイルド) 評価:☆☆☆☆ ふとしたことで女FBI捜査官とともに誘拐された元米国陸軍の精鋭、ジャック・リーチャーは、 犯人たちの真の目的を探りながら抵抗を続け、やがて、その狙いを知り阻止すべく動く・・・ ストイックなヒーロー・元米国軍人ジャック・リーチャーが主人公のサスペンスアクション第2弾。 この女性に優しいハードボイルドなタフガイぶりは世界中の男の格好の見本といえるし、 いかなるときも決して失うことのない冷静沈着さと慎重さも男として学びたいところ。 アンソニー賞受賞の翻訳第一弾「キリング・フロア」、 英国バリー賞最優秀長編賞とネロ・ウルフ賞を受賞した翻訳第四弾「前夜」と同様に、 安定した筆致と水準以上の文章の上手さは、今回も決して期待を裏切らない。 次は翻訳第三弾「警鐘」を読もう。 ・『猟犬』(深見真) 評価:☆☆☆☆ ぶっきらぼうで愛嬌はないが、タフで折れない心をもった女性刑事のハードボイルド連作中篇集。 警視庁捜査一課特殊犯捜査、通称SITの第四係に所属するレズビアンの女性刑事・呉内冴絵は、 風俗嬢連続殺人事件と2件の立てこもり事件の関連性に気付き、背後に見え隠れする陰謀に迫って・・・。 過去に事件の被害者となって指を失ったタフでクールな女性刑事などの登場人物の造詣はもちろん、 捜査に当たる事件の設定や背景、からくりが見事で、銃撃戦の描写もリアルそのもので、 ときにマインドゲームで犯人に迫る様子も臨場感があっていい。 次はより難解で凶悪な事件に対処する長編ものにどっぷりと漬かりたい。 <ただいま読書中> ・『ロスト・シティZ 探検史上、最大の謎を追え』(デイヴィッド・グラン) ▲
by Worthy42
| 2011-05-02 22:55
| 一冊入魂(読書記録)
「よい英文を書くための6カ条」とは以下のことを言うらしい。
1.必要以上の強調や陳腐な言い回しを避ける。 2.あいまいな言葉は書き換えるか、削除する。 3.似ている語を正確に区別する。 4.ムダな繰り返しを避ける。 5.意味のない言葉を削除する。 6.文法、語法、意味上の誤りをなくす。 <3月の購入本> ・『英語正誤用例辞典』(ジェームズ・T・キーティング) <3月の読了帳> ・『女子大生マイの特許ファイル』(稲森謙太郎) 評価:☆☆☆☆ 特許が分からない人でも容易に読める入門書。 入門書の部類でもこれは最適な一冊の一つ。 ・『戦国鬼譚 惨』(伊東潤) 評価:☆☆☆☆ 武田信玄没後、追い込まれていく甲信の武将たちの 決死の騙しあいを描く戦国小説集。 瀬戸際に追い込まれた武将のそれぞれの思惑は 現代人とも通じるものがあることを知るにつけ、どことなく落ち着いた気持ちになった。 人の本質は今も昔も変わらない、ということなのだろうか。 ・『エウスカディ(上・下)』(馳星周) 評価:☆☆☆☆☆ ![]() スペインのバスク地方に一人でやってきた日本赤軍の吉岡は 過激派組織ETA<バスク祖国と自由>の切り札として暗躍するが、 やがて、組織内の裏切り者を炙り出す役割を与えられて・・・。 馳星周の最高傑作と言っても差し支えないのではないか。 オウム真理教をモチーフにしたと思われる『煉獄の使徒』といい、 ノワール作家ながら社会派ミステリ作家としても一流であることを証明している。 バスク料理を作ってみたくなったし、なによりバスクに行ってみたくなった。 <ただいま読書中> ・『WHEN THE GAME WAS OURS』(Larry Bird, Earvin Magic Johnson etc) ・『反撃』(リー・チャイルド) ▲
by worthy42
| 2011-04-09 23:54
| 一冊入魂(読書記録)
試験を受けて、梅を見に行って、スイートポテトを作って、
シネマートでドイツ映画『ソウル・キッチン』(私的評価☆☆☆☆☆)を 鑑賞していたら、春がもうそこまで来ていた。 よくよく考えたら今年は雑誌以外の本を購入していなかったので、 今年最初に買った本は仕事関連の本になる。 ![]() まだ半分くらいしか読んでいないが、入門書としては、 このジャンルでは破格の面白さ+分かりやすさ。 タイトルから一目瞭然のように、『もし高校野球の女子マネージャーが ドラッカーの『マネジメント』を読んだら 』の特許版という趣。 この女子大生がなんとなく萌える(笑)。 その後に買ったのは、たまたま発見した、故デビッド・ハルバースタムの バスケットを題材にしたルポルタージュ『The Breaks of The Game』。 ![]() 1979年のポートランド・トレイルブレイザーズに密着したものらしい。 ちょうど2年前にペーパーバックとして出版されているが、 ハルバースタムが自動車事故で急逝した2年後の日付なので、 作者の死後に(日本でいう)「文庫落ち」した作品か。 ちなみに、上の画像では小さすぎて見えないが、 表紙の下部に"The perfect book about the perfect team"という賛辞を 書いているのが、今日入手した下の本の作者、Bill Simmons。 ![]() アメリカのスポーツ専門チャンネルの人気コメンテーター(?)がまとめた、 バスケ好きの、バスケ好きによる、バスケ好きのための垂涎の一冊。 その名も『The Book of Basketball』(笑)。 何が凄いって、本国では、アマゾンのレビューが約200件ほどあること。 グラウンドや体育館だけでなく、紙の上でもスポーツを楽しむ姿勢の表れ。 マニアにしか受けそうにないこんなバスケ馬鹿のための本が売れているのも アメリカ人のスポーツに対する懐の深さゆえになせる業、なのかな。 ちなみに、この2冊、もちろん、ニューヨークタイムズのベストセラー。 <今月の読了帳> ・『異星人の郷(上・下)』(マイクル・フリン) 評価:☆☆☆☆ 中世時代、ペストの脅威が欧州を席巻していたころ、 ドイツの片田舎に異星人が不時着して、やがて、 そこに暮らす人々との不思議な交流が始まって・・・。 期待していた劇的な展開はなかったが、読み進めるにしたがって、 何とも言えない、とらえどころのない思いに囚われた。 「爽快」ではないが、「壮大」な物語ではある。 ・『魚舟・獣舟』(上田早夕里) 評価:☆☆☆☆ 新進気鋭の若手女流SF作家による6編を収録した一冊。 陸地の大半が水没した世界で暮らす人々と、 魚舟・獣舟と呼ばれる異形の生物との交わりを描いた表題作、 人間の体を食い尽くす寄生菌による奇病に翻弄される 人類を扱った「くさびらの道」の2編は、☆☆☆☆☆評価。 どちらも続編を切に願いたくなるくらい良かった。 ・『忍者烈伝ノ続』(稲葉博一) 評価:☆☆☆☆ 織田信長、武田信玄、上杉謙信らが天下統一に乗り出した時代に 暗躍した忍びたちの運命を描く、前作『忍者烈伝』の続編。 一部の主要キャストも引き続き登場するが、 前作ほど忍びアクションは少ない点は物足りない。 とはいえ、この時代に生きる男たちに特有の正直さ、勇敢さ、冷徹さなど、 戦乱の世につきもののサイドストーリーも魅力だ。 <ただいま読書中> ・『女子大生マイの特許ファイル』(稲森謙太郎) ・『戦国鬼譚 惨』(伊東潤) ▲
by worthy42
| 2011-03-02 23:34
| 一冊入魂(読書記録)
新年早々はまり込んでいるのが、時代小説とSF。
時代小説、と言っても、忍者やはみ出し武士といった 無頼の男たちについて書かれたものを読んでいるだけで、 未だに大御所・司馬遼太郎さえ読了したことは一度もないので 「時代小説を読んでます」などと胸を張って言える身分ではない・・・。 <新年の読了帳> ・『忍者列伝』(稲葉博一) 評価:☆☆☆☆ 新年最初の1冊は、忍びの国に育ち、戦国の時代を生きた男たちの 苛烈な宿命を描いた忍者小説。 術が過ぎて人々から恐れられても、なお、 悲しいかな、サラリーマンのような悲哀を感じずにはいられなかった。 想像を絶する修行に耐え、過酷な競争を生き延びて迎えた結末に なんと報われない職業なのかと真面目に考えこんでしまった。 ・『THE ROAD』(CORMARC McCarthy) 評価:☆☆☆ アメリカの巨匠作家のピューリッツァー賞受賞作。 人類のほとんどが絶滅した米国大陸を南へと向かう父と子の旅を、 非常に抑制を利かせた、乾いた筆致で描き出したロードノベル。 ペネロペ・クルスの夫で名優ハビエル・バルデムが暗殺者役を怪演して アカデミー助演男優賞を受賞した『血と暴力の国』の翻訳版を 読み終えた際にもぼんやりと思ったことだが、 この著者の淡々とした(干からびた感さえある)乾いた筆致が どうやら私は苦手なようだ。 今作も(原作で読んだせいもあるとはいえ)いま一つのめり込めなかった。 とはいえ、最後には何とも言えない、形容しがたい思いで胸が震えた。 元はと言えば、某翻訳者の方がおススメしていたので手に取ったのだが、 日々の通勤中にしか読まなかったので思いのほか時間がかかってしまった。 肝心の英語は、父と子の会話などの簡素な表現が多く、 淡々と書き連ねてあるので、それほど読みにくくはなかったが、 多分、日本語で読めばまた違った感慨にふけることになるだろう。 <ただいま読書中> ・『魚舟・獣舟』(上田早夕里) ・『異星人の郷(下)』(マイクル・フリン) ▲
by worthy42
| 2011-02-07 23:05
| 一冊入魂(読書記録)
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